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次の日の朝。
騒がしいと思って目を覚ませば、ガガガーッ、ピガーン、ピピピピピーッという電子音が聞こえた。
どうやら、昨日のAという神秘的な少女が弄っているゲーム機の音のようだ。
女の子だというのに対戦系のゲームをしているらしい。
途中途中「ちっ……ああ、くそ」なんて容姿に似合わない言葉が聞こえてくる。
「看護師さんに怒られてしまうよ」
「ここつまらないじゃない。スリルあるから、これくらいがいいのよ」
「そういうものかな」
「そういうものよ」
彼女は口を尖らせながら、僕の方なんて一度も見ずにそう答えた。
直後、「あー、負けた死んだ。んんん、んん〜？」と悩ましげな声が聞こえてきた。
ちらっと盗み見てみれば、困ったように画面を見つめている。
僕も同じように画面を見てみれば、『残機×1』との文字が。
いいものを見つけたと言わんばかりに上目使いで僕を見て、可愛く笑って僕に話しかけてきた。
もう、何が言いたいのかくらいわかる。
「お兄さん、私と代わってよ。操作は簡単だからさ」
「え？ でも残機一だろう？ 死んじゃったら…」
「いいからいいから」
無理やりゲーム機を持たされ、意味がわからない状態でポーズボタンを解除した。
すると説明もあまり読んでいないというのにスラスラと指が動く。
攻撃されそうになるたびに「うわ……っ！？」と声が漏れるが気にならない。
自分でも驚く程、ゲームに集中していた。
いつの間にか画面には大きく『CLEAR!!』の文字が。
驚いてAのほうを見れば、満足そうに頷いている。
「カッコよかったわお兄さん。今度はこっちのステージをお願いできるかしら」
「ふふ、これかい？」
いつのまにか毎日Aが来るようになっていて、彼女がいるのが当たり前になっていた。
そして彼女がクリアできないステージを、僕が代わってクリアしてあげる。
今まで静かで寂しかった部屋が、笑顔と気持ちのいい機械音で溢れていた。
その事実に、今の僕はなぜか満足だった。
驚く程、幸せだった。
「あのね、次はこっち」
「ふふ…なんでもかかっておいで…♪」
＊6月7日更新＊
続く (更新停止中)
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作者名：桃 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年2月26日 19時
