短編集JW

・ ページ19

退屈な授業がすべて終わって、放課後。

鞄に教科書をつめて教室を出る。

走ると目立つから、早歩きで下駄箱まで向かって。

急いだからか、心臓がバクバクで

なんて言い訳をしてみたり。

靴をはきかえて、学校を出る。

校門に近づくにつれて、寄りかかってるあのシルエットははっきりしてくる。

心臓、うるさい。

でもこれは急いだせいや、

言い聞かせて、ゆっくり歩く。

と、彼が俺に気づいて

優しく笑って、手を振ってきた。

そんな顔したら他の人も好きになってまうやろ、

また今日も、彼のかっこよさに苛立ちを覚える。

桃「お疲れさん」

俺の頭に手をのせてきて

俺はのんちゃんの手をひいて歩く。

こんなとこクラスの人に見られたら。

桃「なぁ神ちゃん、なんかついてんで」

緑「え、どこ？」

また騙されて、

唇に感じる、柔らかい感覚。

桃「騙された？」

何回もひっかかってるから、もう悔しさもなにもない。

ていうか、幸せさえ感じてしまう。

桃「顔赤なってんで」

頬を優しく触られて、のんちゃんは先を歩いていった。

ほんまに、

どこまで好きにさせるん。

緑「………アホ」

俺も、のんちゃんのあとを追った。

並べば、自然と手が重なる。

のんちゃんの、大きい手。

見上げれば、綺麗な横顔が夕日に照らされて。

俺の、大好きな人

今、幸せって思えるのはのんちゃんのおかげで、

のんちゃんがいるから、頑張れる。

性格なんて正反対やけど、

桃「好きやで、神ちゃん」

突然こうやって伝えてくれるとこも、少し意地悪なとこも、

全部全部、

緑「……大好き」



Fin.

倦怠期は愛を育てる期間　桃×赤→←友達よりも大切な人　桃×緑

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す