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黄「もう秋やな」
赤「外、寒いんやない?大丈夫?」
黄「大丈夫やで。上着着とるから」
どんな服装なんやろ。
気になってしまうけど、ここからやと見えないし仕事も終わらなくなるから我慢。
黄「あとどのくらいで終わりそう?」
赤「今日中には終わると思う」
黄「……ほんまに大丈夫?逃げてもいいんやで」
赤「大丈夫。そのうち先輩達も飽きるやろうから」
話が止まってしまって。
紙をめくる音と、パソコンを打つ音だけが響く。
この沈黙を破りたくて。
でも、思いついた内容はひとつしかなくて。
赤「あ、のさ……」
黄「ん?」
赤「………好、きな人……いるんかなって………」
少しの間も、とても長く感じる。
返事がくるまでは仕事に手つかなくて。
黄「おらへんよ」
赤「……そ、うなんや」
嬉しいのか悲しいのか、よく分からない感情で。
でも俺のことなんとも思ってないのは確かなことで。
そう考えるとやっぱり悲しかった。
黄「しげは?いるん?」
赤「え………」
そんな言葉、返ってくると思わなかったから。
びっくりしたけど、少しでも気づいてくれたらいいなって。
赤「…………いる」
今、電話してる人やで。
そう言えたらいいのに。
でも俺には勇気がないから。
嫌われるのが怖くて言えない。
黄「………そっか」
また会話が止まって。
せっかくの電話やのに緊張して話せない。
机の上に積まれてる書類はどんどん減ってきた。
もうこの電話も終わってしまうんかな。
そう思ったら寂しくて。
赤「淳太……、」
黄「ん?」
赤「このあと………予定あるん……」
黄「ないで。どうかした?」
赤「少し…………会いたい」
なに言ってるのか、自分でも分からない。
もしかしたら淳太はそんなつもりやなかったと思うけど。
それでも声だけじゃ満足できなくて。
黄「ええよ。終わるまで待ってる」
赤「……ありがとう」
会えるなら、1秒でも長く一緒にいたい。
パソコンを打つスピードをあげて。
早く、早く淳太の顔を見たい。
最後1枚の紙を手にとった。
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作者名:・み・ | 作成日時:2019年9月29日 10時