不器用なふたり (ページ30)

今日:46 hit、昨日:29 hit、合計:163,710 hit

30 ページ30

中間side

俺には、３つ下の妹がいた。

甘え上手で優しくて、でも人一倍努力家で。

自分で決めたことは最後までやり通す、そんな子やった。

俺が大学出てホストになるって言ったとき、みんなに反対されて、でもあいつだけは応援してくれた。

お兄ちゃんが決めたことなら応援する、って。

いつかお店持つようになったら教えてね、って。

やから俺は必死に働いて、今の店のナンバーワンにまでなれた。

たまにあいつも店に来て、後輩に紹介したりもしたな。

のんちゃんは、特に可愛がってた。

気づけばあいつも有名企業に就職が決まって。

買ったばかりのスーツ来て毎日通勤してた。

帰ってくるのが遅い日もあったけど、仕事だから仕方ない、って。

頑張らなきゃ、って。

笑顔で言ってたから安心しきってた。

でも、そんなの嘘やった。

幸せそうな笑顔も、楽しいって言ってた言葉も全部。

１年前、いつものように夜出勤しようとしたらテレビのニュースが流れて。

あいつの写真がのってた。

[勤め先の屋上から飛び降り。病院で死亡確認]

そこは間違いなくあいつが勤めてる会社で。

もうあいつの笑顔は見れない、一緒にご飯食べることも話すこともできない。

でもまだ、ほんとは生きてるんやないかって。

そう信じたかった。

あとから聞いた話では、会社でいじめにあってて。

夜遅く帰ってきたのも、仕事押し付けられて帰れなかったって。

精神的に追い込まれてて自殺をはかった、そう聞かされた。

この世界から消えてしまったあいつを取り戻すことはできない。

大切な妹を失ってしまって、俺の世界から色がなくなったんや。