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日が暮れかかって、教室の中が夕日のオレンジ色に満たされていた。
いつもならこの時間は誰も教室にはいないはずだけど、最近は違う。
オレたち5年2組の生徒は、A先生の送別会の準備のために、放課後も残って作業をしていたのだ。もちろんこの日も。
「危なかったね〜」
「ねっ!この袋の中見られちゃったらどうしようかと思って……」
女の子たちはそんなことを言ってクスクス笑い合っていた。
「せっかくサプライズで企画してるのに、ばれちゃったら大変だよね」
「うん。今だって、早く今日の分終わらせて帰らないと。またいつ先生が入ってきちゃうかわからないよ」
「そうだよね。よし、はやくやっちゃおう!」
そう言ってフミちゃんは腕まくりをした。
「ケータきゅんたちは何をしてるんでウィス?」
窓際でその様子を眺めていたウィスパーが訊いてくる。
「教室の飾り付け作ってるんだよ。ほら」
今はちょうど、カラフルな折り紙でチェーンのようなものを作っていた。
「ほーう!意外と上手ですねみなさん」
「まあ……オレたちにできるのこのくらいだし」
女の子たちのようにパーティーやら何やらを企てることのできないオレたちは、女の子たちの指示する作業を言われるがままに手伝っていた。
部活とか塾とかで帰ってしまう子もいたけど、大半の生徒が教室に残っている。
よく考えてみれば、この送別会がA先生との最後の思い出になるんだ。そりゃみんな手伝いたいよね。
「ケータ君たちがこんなにがんばってるんですから、私たちもAさんに何か贈り物をしません?」
「そうニャンね〜……。それなら、チョコボー一年分をプレゼントするのはどうニャン?」
「それあーたが欲しいだけでしょ!!そんなの渡したらAさん困りますよ!」
「いや、なんなら一年分とは言わず、三年分……いやいや、十年分あってもいいニャンね……」
「よくねーよ!!!聞けやこのジバ野郎!!!」
大声で騒ぐウィスパーたちだけど、オレ以外の子には何も見えないし聞こえないから、堂々とスルーできる。
……A先生は引っ越し先でも、妖怪の知り合いができるのかな。
「ケータきゅん!どう思います!?」
「うん……」
「チョコボーがダメニャら、ニャーKBの……」
「だからそれはお前の趣味だろうが!」
ブチきれるウィスパー。
「よしみんな!もうすぐ送別会当日だよ!がんばろう!」
「うん!」
このクラス、ほんと平和だな。
A先生もいれば良かったのに……。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーアイテム
革ベルト
ラッキーパーソン
土蜘蛛さん
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莉奈 - とても面白いです。これからも更新頑張ってください。応援してます。 (2018年9月21日 8時) (レス) id: 59f256afe6 (このIDを非表示/違反報告)
惠里子(プロフ) - 春桜咲都さん» 本当に嬉しいです!めちゃくちゃ嬉しいです!嬉しすぎてコメントを読んだあとしばらくひとりで「ひゃー」ってなってました(笑)良い作品が書けるよう、これからも精進いたします!ありがとうございます! (2018年4月12日 12時) (レス) id: e8c22bb6a4 (このIDを非表示/違反報告)
春桜咲都 - 素晴らしいお話でした。読んでいてとてもおもしろく、読みごたえがありました。惠里子さん、これからも頑張ってください。私はずっと、あなたのファンでいます! (2018年4月12日 11時) (レス) id: 6207eb1882 (このIDを非表示/違反報告)
惠里子(プロフ) - 萌月姫さん» 「心暖まるお話」だなんて、すごく嬉しいです!ありがとうございます! (2018年4月2日 19時) (レス) id: e8c22bb6a4 (このIDを非表示/違反報告)
萌月姫(プロフ) - 番外編も面白かったです!心暖まるお話でした! (2018年4月2日 12時) (携帯から) (レス) id: 876c31ca14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:惠里子 | 作成日時:2018年2月23日 22時