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でもそれは
最初で、最後の幸福だった
彼の腕のたくましさを
掴んだ襟足のやわらかさを
忘れられないまま夏が終わって
その一件もあったことで
心の栄養をたっぷりと吸収したわたしは
新学期からまた学校に行くことができた
忠義はピアスをあけた
だれにも相談せず、ピアッサーで、ぱちんとあっけなく、あけてしまったのだった
似合っていた、でも、変わったのはその耳の宝石だけじゃなかった
女「あ、Aちゃん久しぶり！体調はもう大丈夫なの？しばらく見なかったから心配だったよ」
「うん・・・もう平気、ありがとう」
女「そっか、ならよかった〜。じゃ、うちら行くね〜」
女「身体気をつけてね〜」
「うん」
廊下ですれ違った彼女たち
ぱたぱたと足音を立てて駆けていく
わたしはその後ろ姿を
しばらくぼんやりと見送った
日差しは夏の名残りを引きずったまま、
でも幾分か秋のとうめい度を孕んでいる
見慣れたはずの校舎が、景色が、
日常がすこしねじれてしまったまま
しずかにわたしを包んでいる
大「あれ、A」
「・・・お兄ちゃん」
大「こんなとこでどうした？気分悪い？」
「ううん・・・空を見てただけ」
大「そっか」
はよ教室戻りや？
そう言ってわたしの頭をぽんと撫でた手
するりと離れて遠ざかっていく後ろ姿が
高い空のどこかに残像として映りこむ
______________忠義は、
大「はい、今週の日曜俺とカラオケ行く子挙手〜」
女「あ、わたし行きたーい！」
女「あたしもー！」
忠義は、すべての中心を引き受けて
みんなのものになった
気づいてしまったのだろう
妹であるわたしが、あなたを取り巻く渦に
巻き込まれてしまっていたこと
そのせいでわたしが壊れたこと
きっと、きっとやさしいあなただから
それで自分自身を責めて、
大「ミオナちゃん髪切った？かわいなってるやん」
女「え、そ、そうかな？」
大「おん。俺めっちゃタイプ」
わたしの知らないあなたが
形成された、べつな人格が
後に王子様と呼ばれるあなたを生んで
でも、そんな兄が、わたしを守ってくれていると
弱くてだめなわたしが
もう二度と渦に巻き込まれないように庇って、
自分を犠牲にして、
だから_________________
.
「忠義」
今度は、あなたが壊れてしまわないように、
「・・・わたしも、ずっと、そばにいるよ」
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aaaa(プロフ) - 素敵なお話でした。。安田くんの最後の番外編がなんだかんだ一番心に来たかもしれません(笑)最後の事故の共鳴とか、最後に錦戸くんが気づいたところとかwでもそれに勝る大倉くんのプロポーズ代わりの言葉は最高のハッピーエンドだと思いました！完結お疲れ様でした！ (2020年9月26日 23時) (
レス) id: 37531683ef (このIDを非表示/違反報告)
りな - 長い間、楽しいお話をありがとうございました！！私の中で日々の楽しみとなっていました ！てっきり章ちゃんは亮くんが好きなんだと思ってましたがより切ない展開でしたね…。みんな幸せになってよかったです！お疲れ様でした (2019年6月1日 17時) (レス) id: 94b1ad2688 (このIDを非表示/違反報告)
くるみるく - 予想もしていなかった結果すぎてただただ感動してます（；＿；）3年間ずっと楽しみにしていて、ここまで夢中になれた作品は初めてでした！本当に伏線とか結末とかが凄すぎて凄いという言葉しか出てこない自分が情けないです｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡ (2019年5月26日 6時) (レス) id: 27ccdcf918 (このIDを非表示/違反報告)
みけねこ(プロフ) - 夢中で読んでしまいました。まさかの展開に本当にもう1度読み返したいと思う作品で本当に楽しかったです。 (2019年4月30日 10時) (レス) id: 5ac0d2c424 (このIDを非表示/違反報告)
蛍(プロフ) - 今全部読み終わりました！あとがきを見てまた最初から読みたいと思ったので読み返したいと思います！ (2019年3月30日 10時) (レス) id: aeb6f4aca7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2019年2月14日 21時
