双子の矛盾恋愛式（green）１０

■０１０■ ページ44

.




大倉家のリビングにそれが置かれてあることは、知ってた


"５，１７"


隅っこのほうに撮影日が刻印された
双子の赤ちゃんが身を寄せ合う写真


その内の片方は、紛れもなく俺やった


・・・だから、わかってるねん


おかんは決して俺を捨てたわけやなくて
きっと、いろんな葛藤と戦い続けて





正式に解禁された酒


でも、みんなにとって俺はまだ19やから
夜中にこっそり月と晩酌する


亮とか変な所で真面目やから文句言われるし




テラスに吹き抜ける風が涼しくて
ぼうっと夜空を見上げとったら
リビングのほうから気配がした




安「A？」




亮と寄り添って眠っていたAは
章ちゃん、と俺を呼んで


駆け寄ってきて、となりにちょこんと座った姿


ちいさくてかわいくて
こんなにも________________




安「おーくらなら、上行ったみたいやで」




あふれてしまわないように
俺は笑って目を瞑る


どこにも飛ばせない感情を
胸の内側でぎゅっと抱きつぶす




ふいにくっついてきたAは
甘えるように頭を擦り寄せてきて





「章ちゃん、だいすき」





ああ、今年も

おまえに言ってもらえたなあ





安「おれもだいすき」





神さま、これくらいは許してくれる？


その身体両手で抱きしめて
しっかりと、強く
すこし眠そうなきみの甘やかな体温を
もうちょっとだけ、俺に、ちょうだい？


にぃに、お誕生日おめでとう


そっと、胸元でつぶやかれた秘密の言葉





安「Aはかわいいよ」





どうしたってふつふつと湧き上がる黒い感情を
必死に必死に押さえ込む





安「・・・ほんま、奪ってしまいたいくらい」





だって、これが、



おれの本心









.









その透けるように白い頬に
一瞬だけくちびるを押し当てたこと


Aは、気づいてる？






安「星きれいやなあ」






_________________気づいてない、か

■０１１■→←■００９■

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す