■００４■ ページ38
.
その後の誕生日
５月１７日には友だちじゃなく
家族と過ごすことにした
そこで俺ははじめて
親父に、おかんのことを切り出した
ばあちゃんはすぐその話を終わらせようとしたけど
親父は、いつか話すべきことやから、と
俺にすべてを教えてくれた
俺が２歳のとき、おかんが出ていったこと
俺には双子の妹がおったこと
そして、おかんは、
その妹だけを連れて居なくなったこと
俺は捨てられたん？
訊いたら、
章大はばあちゃんの隣で寝てたから
おそらく連れだせへんかったんやろう、と
親父は重苦しく説明して
夜逃げのように消えたおかんの行方はわからないと
ごめん、と。
何度も俺に頭を下げた
おまえに寂しい思いをさせてしまったのは
自分のせいや、と、何度も
大「やーす」
安「・・・ん？なにぃ？」
大「昼食べにいこ。先輩ら待っとるて」
でもな。
それで、はいそうですか、言うて
何もかも飲み込んで水に流せるほど
俺は出来た人間やなかった
俺はこの、おおくらいう男を
受け容れられなくなってしまった
ほんまはわかっとる
こいつは何も悪くないんやって
責めるべき相手を間違ってるって知ってた
でも、俺にはこのやり場のない感情を向ける場所が
ほかに見つけられへんかった
きらいや。
大倉なんか大っ嫌いや
母親を、妹を、
こいつが俺から奪っていった
なあ、返してよ
おれに、おかんと、Aを、返してよ__________
「お兄ちゃん、忘れもの」
大「ん？あ〜、Aやあ」
「これ今日忘れちゃダメなやつでしょ？しっかりしてよ・・・あ、章ちゃん、おはよ！」
安「おはよお」
ぐるぐると渦を巻く暗い感情に呑み込まれそうな日々の中
Aと過ごせる時間だけが、唯一の俺の救いで
かわいいカタワレ
こうして見ると、俺ら、やっぱり似とるな？
だって、双子やねんで
この世にたったふたりだけの
誰もおらんタイミングを見計らって
ちいさなその背中を抱きしめる
Aはくすくす笑って
にぃに、どうしたの？と
甘えた顔で
ああ、
おまえも残酷やなあ
あいつのこと、あいしてるんやろ？
なんでなんかな。
なんであいつばっかりなんかな？
なんで、だって、おれやって、
.
Aのこと、あいしてるのに
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3189人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aaaa(プロフ) - 素敵なお話でした。。安田くんの最後の番外編がなんだかんだ一番心に来たかもしれません(笑)最後の事故の共鳴とか、最後に錦戸くんが気づいたところとかwでもそれに勝る大倉くんのプロポーズ代わりの言葉は最高のハッピーエンドだと思いました！完結お疲れ様でした！ (2020年9月26日 23時) (
レス) id: 37531683ef (このIDを非表示/違反報告)
りな - 長い間、楽しいお話をありがとうございました！！私の中で日々の楽しみとなっていました ！てっきり章ちゃんは亮くんが好きなんだと思ってましたがより切ない展開でしたね…。みんな幸せになってよかったです！お疲れ様でした (2019年6月1日 17時) (レス) id: 94b1ad2688 (このIDを非表示/違反報告)
くるみるく - 予想もしていなかった結果すぎてただただ感動してます（；＿；）3年間ずっと楽しみにしていて、ここまで夢中になれた作品は初めてでした！本当に伏線とか結末とかが凄すぎて凄いという言葉しか出てこない自分が情けないです｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡ (2019年5月26日 6時) (レス) id: 27ccdcf918 (このIDを非表示/違反報告)
みけねこ(プロフ) - 夢中で読んでしまいました。まさかの展開に本当にもう1度読み返したいと思う作品で本当に楽しかったです。 (2019年4月30日 10時) (レス) id: 5ac0d2c424 (このIDを非表示/違反報告)
蛍(プロフ) - 今全部読み終わりました！あとがきを見てまた最初から読みたいと思ったので読み返したいと思います！ (2019年3月30日 10時) (レス) id: aeb6f4aca7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：べに
| 作成日時：2019年2月14日 21時
