双子の矛盾恋愛式（green）１０

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夜だった


家族が寝静まり、夫の帰宅を待つふりをしてママは、半分だけ書いた離婚届けを置き、わたしだけを連れて家を飛び出した


その当時の記憶が・・・わたしの中には、すこしだけ残っている


乗り物に揺られる感覚と、見知らぬ家、そして、見知らぬ男性と、ちいさな男の子____________




母「親として・・・人として、最低なことをしたとわかってるの。


でもママは、本当に幸せだった。


A。あなたがやさしい子に成長してくれて。
忠義。・・・あなたの、母親になれて」




でも、とママは言い、改めたように頭を下げる






母「今まで黙っていて、

こんな親で、



ほんとうにごめんなさい」






_____________見えていなかった真実を知って


わたしの手を握る忠義の手に
ほんのわずかに力が入った


でも、それだけだった


ママたちを非難しようとか罵倒しようとか
そういう気持ちはいっさい無いことが
手のひらから伝わってきた


わたしと忠義の中には互いの手を通して
おだやかな感情がぐるぐると行き来していた


まるで、本当にひとつになったみたい


わたしは目を閉じ、そのあたたかい感情の流動を全身で感じてから、





「パパママ、顔上げて？」


母「・・・・・」


父「・・・A」


「大丈夫。




わたし、知ってたから」






その瞬間、え、と声をあげた両親が
ちょっと笑っちゃうくらいのぽかんとした顔で
まじまじとこちらを見つめる


わたしは思わずすこし吹き出しながら、


ふたりの顔を交互に見て





「覚えてたの。その当時のこと、ちょっとだけ・・・

だから、昔から、なんとなく感じてた。忠義とは血がつながってないんだろうなって。

確信したのは、高校生になってからだけど」





そっと忠義のほうを向くと
彼もこっちを見ていて
目が合って、ふふ、と微笑み合った





大「ま、俺は最近やけどな。知ったの」





そう言って肩をすくめる忠義も
両親を前に
おだやかな顔をしている





大「・・・正直はじめはな、なんでそんな大事なこと黙ってくれとってん、て。みんな大嫌いや、一生許さへんって思ってた。

何せ20年間、なーんも知らされずに生きてきとったんやから。

でもな・・・でも、もうええねん」





忠義はパパを見て
それからママを、
最後にわたしに視線を注いで
すごく、すごく・・・幸せそうに笑った


その笑顔には何ひとつ偽りなどなく
秘められた真実より何より
たしかな事実が此処にあった

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