▽ ご ページ5
『ただいまー。』
ガチャリ、とリビングのドアを開けると、
父「遅かったな。
……飲んできたのか？」
……また、か。
お父さんの 嫌味が飛んできた。
『ん。夢さんと、飲んできたの。
門限は守ってるから、いいでしょ。』
嫌になる。
この歳になって、門限があることも、
それを黙って 受け入れなくちゃ ならないことも。
母「Aちゃん、
お父さんは、心配してるのよ。」
『…………わかってる。
なんにもないから、、
心配しないで 大丈夫だから。』
お母さんに、そんな顔されちゃうと…
結局、私はいつも 何も言えなくなっちゃう。
窮屈な実家。
なら、家を出て行けばいいだけの話。
……ってなわけには、いかない。
私には、家を出れない理由がある。
いい歳をして、門限を 課せられるだけの理由がある。
毎日、朝起きて、会社に行って、
門限を守って帰宅する。
生活に『潤い』なんてものは、ない。
恋、なんて…
もう、出来ないかもしれない。
前に進みたい。
そう、思う 一方で、それを踏み出す勇気もないのかもしれない。
傷つくのが、恐いんだ。
また、周りが見えなくなるのが、恐いから。
自室に戻って、窓を開けると、
サワサワと吹く夜風が、カーテンをヒラヒラと泳がせて、私の髪もさらって行った。
パーマでも、かけようかな。
なんとなく、伸ばしてきた髪。
あの人が、長い髪が好きだ、と言ったから
今まで 切らなかったわけじゃない。
未練じゃない。
なんとなく、ここまで伸ばしたから、
勿体無くて 切れなかった、だけ。
もう、なんとも思ってないから、
バッサリ切って、パーマでもかけてみようかな。
気分転換になるかもしれない。
その時の私は、
退屈な毎日に、小さな変化が
欲しかったのかもしれない。
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作者名：ばななのみるく。 | 作成日時：2018年1月4日 23時
