▽ いち ページ1
『お願いします。
あの人と、別れて下さい、、』
床に 這いつくばった女の手が
足に絡みつく。
幾つもの、啜り泣く声と、
落胆に満ちた、眼差し。
呆然と立ち尽くす足を 掴んだまま、
ゆっくりと 顔を上げた 女に、
息を呑む。
その表情と、その…
・
・
「………、」
ボンヤリと、白い世界が 浮かび上がる。
徐々にハッキリとしてきた意識が捉えた
真っ白な天井。
また、夢を見てしまった。
幾度となく 見てきた、夢。
週初めの朝から 見るには、
随分と、気分の落ちる夢。
カーテンの隙間から 漏れる、朝の光を
遮るかのように、腕を顔の上でクロスにした。
爽やかなはずの 陽の光さえ、
今の 私には、溜息の理由でしかない。
朝から、落ちた気分を 洗い流すべく、
洗面台で、いつもより 念入りに 洗顔をして、、
こんな朝は、
薄くパウダーを叩くだけのメイクをする。
いつもは、キッチリ引く アイラインも、
今日は、お休み。
ヌードカラーの 口紅を引いて、
鏡に映る、今朝は少し 地味なメイクの女に
言葉を吐く。
「因果応報。」
いつもは、お砂糖もミルクも『アリ・アリ』
なコーヒーも、
今朝はブラックで流し込む。
好みじゃないけど、
自分を 甘やかしたくない。
今日は、そういう日。
つい癖で、手が伸びてしまった スカートを諦め、
パンツを手に取る。
派手じゃないアクセサリーを付けて、
ジャケットを羽織ったら、お仕事モード。
今日は、すっごい 頑張ってやる。
無駄話なんて 叩かないくらい 頑張って、
ちゃんと、頑張れたら、飲みに行こう！
明日のために。
早く、忘れたい。
もう、同じ過ちを 繰り返さないから、
忘れさせて。
前に、進みたいの。
私は、幸せになっちゃダメですか？
もう、恋なんて…しては駄目ですか？
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作者名：ばななのみるく。 | 作成日時：2018年1月4日 23時
