第31話 ページ31
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「ところで、その紙袋に入ってる服…どうしたの?貴方の趣味っぽくないけど」
「お借りした物です。これから返しに行こうと思って…」
「リヴァイさんに服を借りるシチュエーションって、例えば?」
「……」
ふと表情が一変し、私をギロりと睨みつける。
だけど、全く怖くもないし動揺もしなかった。
だって…
「それは、ルアナさんご自身が一番分かっていらっしゃるんじゃないですか?」
「…さぁ?何のことかしら」
「昨夜は大変でした。本当なら警察の方にお話する事ですが…私は誰にも話していませんよ。勿論、リヴァイ部長にも」
「何よ…それ……私を脅してるつもりッ?!」
「別にそういう訳では。ですが、そう捉えるということは、私がお話しなかった事は事実であると解釈してもよろしいのでしょう」
「ッ…!」
「では、失礼します」
失って怖いものが今は何も無い。だからなのか、感情も薄らいでいる。あんなにも鬱陶しかったルアナでさえ、猫が威嚇しているのと同じように感じる。
*
一人、カフェで待っていると少ししてリヴァイ部長がやって来た。急いで来てくれたのだろう、少し息を切らしている
別に急がなくても良かったのに。こんな些細なことでさえ、まだ嬉しく感じてしまう。私の感情は貴方以外には染まらなくなっているんだ…
「悪いな、仕事の片付けが長引いちまって」
「いえ、お忙しい中すみません」
お互い、あまり目を合わさない。
リヴァイ部長は目の前に腰掛け、紅茶を頼んでは私の方へと向き直った。そして、優しい言葉をくれる
「怪我は大丈夫か?本当に…怖い思いをさせちまってすまない」
「もう謝らないで下さい。リヴァイ部長は何も悪くありませんし、私はもう大丈夫ですから」
それよりも、と紙袋を彼に渡す。中身を確認しては、「わざわざ悪いな」と受け取った。少しだけ触れた指先がとても冷たいのに、とても愛おしく感じる。
さぁ…渡してしまった。早く立ち去らないと…
頼んでおいた珈琲を飲み干し、コートに手を掛けようとすると、部長は「おい」と私を止める。
顔を上げると寂しそうな顔をしていた。
「もう一杯頼んで、俺に付き合え」
「……でも」
「そんなに俺と2人話すのが嫌か?」
それは意地悪すぎる質問だ。
そんなの答えはずっと決まってる。
変わりようのない答えが。
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ああ - ハッピーエンドで終われて良かったです!面白かったです (10月7日 22時) (レス) @page50 id: 951a2a07c6 (このIDを非表示/違反報告)
みゆこ - リヴァイファンにはたまりません!!好きです!! (2022年7月31日 14時) (レス) @page50 id: 88bc64309a (このIDを非表示/違反報告)
美緒ちゃん(プロフ) - 完結ありがとうございました。ハピエンですね。良かったです。次は、甘々シーンを増やしていただけると嬉しい限りです。 (2022年7月18日 21時) (レス) @page50 id: 4f2d722dc2 (このIDを非表示/違反報告)
はてな(?)(プロフ) - 夢梨さん» 夢梨さん、コメントありがとうございます!更新遅くて申し訳ないです…。完結できるよう頑張ります。最後までお付き合いください🙇🏻♀️ (2022年4月19日 18時) (レス) @page47 id: 2bed4e8e7b (このIDを非表示/違反報告)
夢梨(プロフ) - 書き直される前も書き直された後も面白いです!更新のたびに読んでいたら続きが気になりすぎるので、最近は更新話数をためてから一気に読むようにしています笑😅 完結まで頑張って下さい! (2022年3月28日 21時) (レス) @page46 id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はてな(?) | 作成日時:2021年5月30日 22時