10.5 あの日の医者〈2〉 ページ6
そんな怖い藍沢先生の視線にも気づかず、鴇田先生は笑顔で話しかけてきてくれた
A｢あの時依頼ですね｣
｢はい！あの時は本当にすみませんでした。ありがとうございました｣
A｢お礼言われるほどのことしてないですよー！私は当たり前のことをしただけなので｣
｢でも、自分は何もできなくて鴇田先生が来てくれて、本当に助かりました｣
A｢…はい｣
｢あの！何かお礼を…｣
A｢えっ！？お礼なんていいです、本当に！｣
｢っでも｣
A｢んー…あ！じゃあ…｣
｢…！｣
お礼代りだと言って告げられた言葉は、俺の励みに繋がる言葉で、今までよりも、今よりも一層頑張ろうと思わせてくれるものだった。
キラキラと輝く彼女の姿に憧れと尊敬の念もさらに増し、笑って｢じゃあまた｣と去っていく後ろ姿に俺は深く一礼をした。
先に戻ってて、と言われていたのに廊下の離れた所で彼女を待っていた藍沢先生の元に歩いて行った彼女は、また2人並んで歩き出した。
ナースたちが救命の美男美女コンビ、なんて呼んでいるのを聞いたことがあるが、若手エース、と言われる2人が並んでいるのはやはりお似合いだと思った。
俺もまた2人とは反対に向かって歩き出した
ーじゃあ、私が患者さんを診ててどうしようもない状況になった時、助けて下さい。一緒に患者さんを救いましょう？
眩しい彼女の背中に追い付けるように頑張ろう。
交わした言葉をいつか約束とできるように…
彼女を助ける、なんて烏滸がましいけれど、それでも小さな小さな欠片だとしても助けられるだけの力を持つ自分となれるように…
それが新しくできた俺の目標
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 96人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ほの | 作成日時：2017年9月18日 14時
