112.さよなら大好きな人…side N ページ9
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潤「この本めっちゃボロいんだけど。まさか店に置くとか言わないよね？」
和也「置くかよバーカ」
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テーブル拭きをしてる潤が、置いておいた小説を手にとってふーんと興味なさそうにまたテーブルに置いた。
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潤「Aちゃん怒ってたけど大丈夫なの」
和也「大丈夫だろ」
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その小説を手にとって、表紙をそっ……と撫で上げた。
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ーーーー…和也『もう好きじゃない。菜穂も俺のことは好きじゃないでしょ』
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桜の花びらが君の肩に落ちた時、答えは歴然だった。
何年ぶりにベンチに、またふたり。
肩を並べた。でも
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その間には、いつかのように
数センチの距離。
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菜穂『うん。もう好きじゃない』
和也『…なら、その本ももう返してもらわないと』
菜穂『…そうだね』
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すっ…と差し出された古ぼけた表紙。
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和也『…あの時、俺は約束を破った』
菜穂『うん』
和也『でもその理由は言えない』
菜穂『…そう』
和也『ただ一つだけ言わせて欲しいことは』
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和也『確かに俺は菜穂が好きだった』
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ぶわっと強い風が吹いて、パラパラ…と本のページが捲れる。
そして現れたのは、裏表紙。
黄ばんだ、俺が挟んだメモ。
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菜穂『…私も死ぬほど好きだった』
和也『…死んでないけどね』
菜穂『…(笑)、死んでないから大丈夫ね』
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菜穂はそう笑って、黄ばんだメモを手にとってビリビリに破いて桜吹雪と共にグラウンドへと投げ捨てる。
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ふわり。
ひらり。
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菜穂『…翔くんのことが好きだってもう気づいてたのに、言わなかった私のせい』
和也『？』
菜穂『翔くんにあんなに言ったのに本当にいいのかって再確認されて悲しくなって心配させようと思って家出したの』
和也『…巻き込むなよ』
菜穂『先輩も来てくれるって思ってました』
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菜穂が立ち上がる。
桜が舞うその姿に思わず目を細めた。
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菜穂『ありがとう、さようなら先輩』
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和也「ーーーー…」
潤「ニヤニヤしてキモ」
和也「うっせ」
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窓の外を眺める。
飛行機雲が、流れてた。
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