107.あの頃と今では感情も何もかもが違うだろう？ ページ4
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和也「…櫻井さん」
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突然のカズの呼びかけに、翔ちゃんの頭がゆっくり上がる。
カズは私の隣に立って、少し身長の高い翔ちゃんを見上げていた。
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プップー、と鳴ったクラクション音はどうやら大型トラックのものだったらしい。
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和也「…俺は菜穂が好きです」
翔「…はい」
和也「でもそれは男として、じゃない感情です」
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夜の街は人々が行き交っていて、一体どこから湧いてきたの？ってぐらい。
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和也「菜穂の幸せはあなたと一緒に一生を添い遂げることだと思ってます」
翔「…」
和也「俺は誰に何を言われようが菜穂とは付き合わない。…もう、好きじゃないから」
翔「…」
和也「友人を探す、という一環でなら心当たりはなくはないです」
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どうですか。
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カズがここまで誠実に話しているところを見たのは初めて。
いつも無愛想でテキトーに話してるのに、こういうときに限って思い切り「大人」を出してくる。
…ずるいんだよな。
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翔「…わかりました。」
和也「…なら、菜穂が行く場所は一つです」
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和也「必ず、います」
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夜桜が、春風に吹かれて
ひらひらと宙を浮いて、回って
重力に従って、ひらりと彼女の肩に舞い降りた。
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翔「ーーーー…菜穂」
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翔ちゃんが優しい、柔らかい声で「なほ」という二文字を口にする。
するとその名前の持ち主はピクリと肩を震わせ、両手に持っている小説をパタン…と閉じて
ビックリしたような顔でこちらを振り向いた。
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ひらひら、と夜桜が舞い散る。
その桜は菜穂さん全体を包み込むように舞い降りている。
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菜穂「なんで…」
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ベンチに座っていた菜穂さんは、スッと立ち上がって
渡り廊下にいる私とカズと翔ちゃんを見て、ヘーゼルナッツのような瞳を丸くさせた。
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案内されたのは紛れもなく、カズと菜穂さんの出会いの場だった高校。
半信半疑でついていったものの、確かに菜穂さんは“あの” 渡り廊下のベンチに座っていた。
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ひらひらと舞い落ちる桜と共に。
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