133.焦燥感 ページ30
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琴海ちゃんは、確実に私よりカズといる時間が長い。
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さすがに10コ以上も下の女の子に、ましてや制服を着た未成年に手を出すまい。
…普通の男だったら。
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カズは普通じゃない。
「女子高生を好きになったんじゃない。好きになった子が女子高生だった」
…とか言い出す、絶対。
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それに比べて私はどうだ。
ガサツで、茶髪で？純粋じゃなくて、ああ言えばこう言う。売り言葉に買い言葉。
可愛げがない。
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正直に認めよう。
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「…」
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焦ったんだ。
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年下の女の子に取られるかもしれない。そんな焦りが私の心を掻き立てたんだ。
たまたま目に入ったショーウィンドウ。
そこには可愛らしい花柄の白のチュールスカート。私は基本いつもパンツスタイルで動きやすさを重視。
スカートなんて…持ってたっけ？ってぐらいのスカート離れ。
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脳裏に琴海ちゃんの制服のスカート姿が浮かび上がる。…可愛かったな。細くて白くて。
きっと琴海ちゃんがこれを履いたら可愛いんだろうな。
…カズも、好きそうだな。
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そう思ったら気づけば店内にいて
気づけば店員さんに話しかけられ
気づけば試着を何回もしていて
気づけば白のチュールスカートはさすがに年齢的にどうなの？となり
気づけば黒のシックな感じのチュールスカートを購入していた………。
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「なにしてんだ私…」
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外に出るとすっかり空は夜。信号の赤が目に入ってチカチカと光る。
街はネオンに包まれていて、左腕につけている腕時計を見るとそろそろ店じまい。
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びゅうっ…と生ぬるい夜風が頬を殴って思わず目を閉じる。
なんだろう。
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「…？」
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なんか、嫌な予感がする。
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ざわつく左胸。ぶるる、と震える背中。
なんだか早く帰らなきゃいけない気がしてカツカツとアスファルトを蹴り飛ばすスピードを速くした。
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片手にはさっき無意識に買ってしまったチュールスカートが入っている紙袋。
これを履いたら少しは自信がつきそうで
…あわよくば、カズに褒められたくて。
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…まあカズはスカートなんかに興味はなさそうだけれど
ちょっとでも、というのは密かな乙女心だった。
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