128.恋におちて ページ25
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今まで大切にしていたようなものを
私の手で切ってくれて構わないと言われた。
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「…ねえ、あの」
和也「ん？」
「今日…お店行って、閉店したあと…賄い食べさせてもらったりとか…ダメ……？」
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セルフレジでカズが慣れた手つきでカゴの中に入れて行った品物たちをスキャンしていく。
私はというと彼の手でスキャンされたものたちを受け取って、エコバックを忘れたというから
お金を払ってもらったスーパー袋に詰めていく係。
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和也「…」
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その前髪を、切ってくれと言われた。
大事にしていた前髪を、潤くんでも誰でもなく。私の手で。
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ーーーーー…それは、即ち。
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和也「…お茶のペットボトル」
「えっ？」
和也「何本あるか数えてみ」
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ただぼぉっとしながら、テキトーに袋に詰めて行ったお茶のペットボトル。
それを意識して数えてみると、500mlのペットボトルが4本あることに気づく。
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潤くんでしょ。カズでしょ、ことちゃんでしょ。
あれ一本多い…って気づいた時にはカズ既に会計を済ましていて、買ったものも元々少なかったからビニール袋に入れられていて。
私の手から半ば強引に奪い取ったそれ。
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サッと横を通り過ぎるものだから、ハッと我に返って口を開く。
三歩先を歩く、カズの背中は 心なしかとても温かい。
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「4本って」
和也「最初からあんたに賄い強請られるってことぐらい計算済みだっつーの」
「…」
和也「そのために何好き？とか聞いても上の空だし。材料も四人分買ってんの」
「…うそ」
和也「いいんじゃない。食ってけば？」
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あ、潤から電話だ。もしもし？
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スーパー袋を片手でガサガサ言わせて、片手で器用に電話に出る。
そしてその薄い上唇からは、私を惑わす甘い言葉。
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食ってけば、と殴り捨てたような言葉とは裏腹に
表情はとても柔らかくて、甘ったるくて微笑み。
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五歩先を歩く、カズの背中を追いかけて胸を押さえる。
こんなの無理。期待するなって方が無理だよ。
もしかしたらカズも…なんて思わない方が無理。
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和也「A？」
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おさまれ、しんぞう。
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