127.風船は萎む運命…side J ページ24
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泣きそうな顔をしてる。っていうのが
第一印象だった。
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琴海「かずなりさん、って女の人とお話しするんですね…」
潤「いやするだろ(笑)。じゃなかったら生きてこれないでしょ、この現代社会」
琴海「いやでも…なんか珍しいもの、見せてもらった気分です」
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この子、カズにいつか泣かせられるんだろうなぁ。
それが西野Aに対しての、俺の独断と偏見なる第一印象。
そしてその予感は見事的中。
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…まさか俺が思ってる以上に、カズとAちゃんが心を許しあって好意を寄せ合ってるなんて。
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fishにたどり着いて、ことちゃんと俺。お互いに着替えを済ませてテーブル拭きをスタート。
キュ、キュ、とリズミカルに動かす手と
バク…。ばく。という俺の心臓音はどうやら比例はしないらしい。
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ーーーーーー…“潤くん！”
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なんの躊躇いもなく、俺に向けてくる最上級の笑顔。この笑顔はまだカズは見てないんだろうな。
俺だけの、もの。
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…きゅっ。
テーブルを拭いていた手がとまる。
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ん？
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俺だけのもの、ってなんだ。
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琴海「いやでも西野さんの彼氏さんは潤さんだって本当にそう思いました！」
潤「え？(笑)」
琴海「すごいお似合いでしたもん！美男美女って感じでスラーっとしてて相思相愛って感じで！」
潤「いやいやないない」
琴海「お二人、本当に付き合ってないんですよね？」
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左胸がきゅっと萎む。
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『カズのことが、すごい好きなんです』
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全身全霊でカズを好きになったAちゃん。
泣きそうな彼女。
折れそうな彼女。
なのに一度として折れたことはない彼女。
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胸が風船のように萎んでしまったら、あとは簡単だ。
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潤「…Aちゃんはね、カズが好きなんだよ」
琴海「…え？」
潤「んで、たぶんカズもAちゃんが好き。アイツは気づいてないかも知んないけどね」
琴海「えええ…」
潤「だからさ俺が入る隙間なんてないんだよ」
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潤「…ないんだよ」
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空気が抜かれて、ただただ萎んで行くのを待つだけの運命。
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