124.当たり前は当たり前じゃない ページ21
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ぷらぷら。
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爽やかな風を切って、ぷらぷらと
私の隣で空気を切っている、その左手に
触れたくて、…でも触れちゃいけなくて。
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手を繋ぎたいな、と純粋に思ったのは多分高校生以来一度とない。
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和也「…穴開く」
「へっ？」
和也「さっきからずっと見つめて来てナニ。俺そろそろ穴開くんだけど」
「みっ…！？見つめてません！見つめてません…！」
和也「あ、そ」
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眉間にしわを寄せて私の方を見て来たカズは素っ気ない返事をしたらガラガラとスーパーのカートを引いて歩いていく。
そんな後ろ姿を慌てて追いかける。
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ーーーーーー…買い出しってなに？
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その質問に返って来たのは「賄い用のスーパーに普通にある食材」。
…それ買い出しなのか？まあ買い出しか…。
勝手にもう少しおしゃれなとこに行くと思っていたものだから馴染みのあるスーパーに入って行くところを見て唖然。
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スーパーと言っても確かに大きな商業施設だから、色んなテナントが入ってるんだけど…。
食品売り場だけ切り取ればただのスーパー。
そんなカズは野菜コーナーでずっと原稿を推敲する作者のようにトマトと睨めっこ。
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バカみたいに真剣なカズの跳ねた襟足を眺めて、ただただ口元が緩む。
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“料理をしたくてしたわけじゃない”ーーーー…、カズはいつかそう言っていた。
彼の過去を知ったらその意味がわかる。拾われた大野さんが料理人だったから料理を始めざるを得なかった。
きっと最初はただ『生きていくツール』として始めたんだろう。
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でも、今は。
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和也「…んだよ」
「いやぁ…、真剣だなぁだと思って」
和也「同じ値段で買うならより新鮮なもの、ってこれ常識だろーが」
「まあ確かにそうなんだけど…」
和也「それに潤ならまだしも、ことちゃんに変なもん食わせちゃダメでしょ」
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料理をしてることさえ楽しそう。
でもなんでだろう。
これは法則？
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「…そうだね」
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あなたが楽しそうだと、私は悲しくなる。
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ことちゃんはカズの賄いが当たり前のように食べられるのか。
…そっか。
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