115.逃した魚は大きい ページ12
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カランカラン…と既に懐かしい響きを奏でるベルに、「あぁ…fishだ」と思った自分。
すぅ、と息を吸って吐いて。大好きな木の匂いを感じた時に「あぁ、fishだ」と感じた自分。
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コツン、とここの床を踏みつけるのは随分久しぶりだ、とそう思いながら賑わっている店内を歩き進める。
やがてすぐに、奥のスタッフルームから見慣れた顔が見えて
その人と目と目があった瞬間、ニッカリと笑われる。
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ニッコリ、じゃなくてニッカリ。
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潤「Aちゃん！久しぶり、来てくれたんだ」
「あ、久しぶり…。あの最近ちょっと忙しくて、でも仕事が片付いたからお邪魔しようと思って」
潤「大歓迎。ありがとう。カズも喜ぶよ、こちらへどうぞ」
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髪型を変えたな、と潤くんにエスコートされながら後ろ髪を見つめてた。
前までは黒髪だったのに茶髪になってて、毛先もふわっとした…どっちかと言うと前はチャラかったけど今は親しみやすい感じ。
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“カズも喜ぶよ”ーーーーー…、そんな安易な言葉でさえ私の安い胸は跳ね上がる。
あの日以来…、会ってない。
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菜穂さんときちんとケリをつけて、私に微笑んでくれたあの日以来…、カズとは。
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必要以上の緊張にお昼に食べたクリームパンが胃の中からせり上がって来そうな感覚。
いつもの席ーーーー…、厨房がよく見える席はどうやら予約席になっていて潤くんはアイコンタクトをして「ごめんね」とバツの悪そうな顔。
私はぶんぶんと首を横に振って、平然を装いいつもとは違う席に腰を下ろした。
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ここからだと…、厨房は見えない。
きっと潤くんのことだから私が来たことはカズには伝えてくれるんだろうけど…
会いに来てくれるとは限らない。彼女じゃないんだから。
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私は潤くんを呼んで何品か注文をして、また潤くんが去っていく。
そんな潤くんの背中が遠ざかっていくのをまるで他人事のように眺めてふと気付く。
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…そういえば、私はカズに好きって言ってないわけで。
そして私は翔ちゃんのことが好きだと言うことをカズに否定していないわけで。
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…となると、未だにカズは私が翔ちゃんに片思いをしていると思っているわけで…？
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