105.掴まれた腕は寂しさを持て余す ページ2
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バッッ！とまた大きな音がしたかと思えば
今まで真っ暗だった空間が一瞬にして明るくなる。
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急に点いた照明たち。
店内が一斉にオレンジ色にライトアップされて、今まで見れなかった
私の手首を握っているカズの表情が瞳に映り込む。
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泣きそうだった。
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酷く切ない顔をして私のことを見つめているものだから、私も酷く切なくなった。
窓の外の他のお店の電気も点いていたから、恐らく一時期的な停電だったんだろう。
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でもそんなこと、今の私には考える隙間なんて一ミリもない。
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プルルルル…と鳴っては止まって
プルルルル…と鳴っては止まって
それをずっと繰り返す私のスマホ。
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明るくなった店内で
お互いの表情が見えてしまうような空間で
この状況は私にとって死んでしまう一歩手前な世界。
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「…お願い。離して」
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離して欲しくない。
でも翔ちゃんがこんなに電話をしてくるってことは相当なことがあった時だ。
それに
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「…お願い、離してってば」
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これ以上、毒を塗っているカズの手に触れられていると赤く腫れ上がってしまう。
その毒はやがて全身に浸透して、赤く腫れ上がった実はパチンと弾けて溢れてしまう。
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離してほしいのは一種の自己防衛。
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和也「…」
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懇願を続けると、やがてパッと離された手。
温もりが離れて、それがやけに淋しくて思わず目を伏せる。
自分勝手な考え。
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視線は決して絡みはしない。
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「…はい、もしもし」
翔『…A！？』
「え…、あうん。どうしたの翔ちゃ…」
翔『二宮に連絡つく？！』
「え、カズ？」
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電話の向こう側の翔ちゃんはただならぬ雰囲気で、せわしなく。
思わず出た「カズ」に、目の前で腕を組んで目を伏せていたカズが私の方を向く。
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「…カズがどうかしたの？」
翔『菜穂がいないんだ』
「…は？」
翔『喧嘩して出て行ったきり帰ってこなくて』
「…喧嘩？」
翔『こんなこと初めてで…、二宮なら居場所知ってるかなと思って』
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雨はいつの間にかあがっていた。
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