99.侵食 ページ20
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明日の何時の便で向かうの？とメールを打った。
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目を閉じて、傘を閉じて、息を吸って、吐いて。
考える。思う。想う。
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“本当にいいの？”と私が問う。
“本当にいいの”と私が答える。
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真実を聞き出して、傷つくのは私かもしれない。もうここには来れないかもしれない。
あの笑顔を見れないかもしれない。軽蔑されるかもしれない。
泣くかもしれない。もう戻れない。
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窓を見ると暖かなオレンジの照明が浮かぶ。
扉にはcloseの看板があるけど、私は御構い無しにその扉に手をかける。
どうせあいつは休みだろうが休みじゃなかろうが店にいるんだ。もう知ってる。
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ギィ…と扉を開けて、カランカランとベルが鳴って
コツン…とパンプスを鳴らして暖かな空間に入り込み
ポトン…と閉じた傘の先から雫が一滴。床に落ちてそこだけ色が濃くなる。
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空は曇って今にも雷を落としそう。
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奥の方から人影がゆらゆら見えてきて
それはスローモーションだった。
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カツ…ンと私とは違う足音が店に響いて
顎にホクロを持った人物が私を見て目を見開く。
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ーーーー…あぁ、思ったよりダメージが大きい。
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和也「…なんで」
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パチン…と胸が弾けた音。
おかしい。あなたといると胸が熱を出すみたい。熱くて目頭も熱くて
今にも泣きそうだけどグッと我慢。ここで泣いたら意味がない。
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彼に何があったのか。それを聞くためにここにやって来たんだから
ここで折れたら負けだ。
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久しぶりのカズは私に想像以上のダメージを与える。その傷は痛いものではなく
じわり…じわり…と私の心を侵食していって
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やがてその棘はちくり…ちくり…と胸を絡ませる。
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「…久しぶり」
和也「今日は閉店ですけど」
「この前はありがとう。おかげですっかり治りました、風邪」
和也「…あぁ」
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ポトン…とまた傘の先から落ちる雨雫。
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私は歩いてカズの元に近づいて行く。
どうやら今日はお店に人はいないみたい
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「話があります」
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二人きりの、雨の夜。
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