96.精神安定剤 ページ17
.
.
ちゃぽん…、って音がしたのは
.
.
翔「…なんで？」
.
.
菜穂さんが、コーヒーに角砂糖をひとつ。
綺麗な指先から、落としたから。
.
.
菜穂「なんで？」
翔「俺、言ったよな？ついてこなくてもいい、って。何年で帰って来るかも分かんないから別れてもいいって」
菜穂「言ったね」
翔「じゃあ、なんで…」
菜穂「ちょうどいい機会だなって」
.
.
菜穂「忘れられない人を、忘れるいいチャンスだなって」
.
.
ごめんなさい。言い合いになると思ったからAさんに来てもらったんです。
翔くんの精神安定剤は、Aさんだから。
.
.
だから、私と翔ちゃんを隣同士に。
.
.
翔ちゃんが膝の上でぷるぷる…と拳を震わせてる。
.
嫌悪感。
.
.
翔ちゃんからしたら酷い拷問だ。
菜穂さんは自分を見ていないかもしれない。重ねている影はカズかもしれない。
愛してるのに、愛されてない。
.
同じ部屋にいるのに、触れられない。
.
.
拷問以外の何物でもない。
.
.
でも海外に行ってしまえば。カズと菜穂さんが出会うことはなくなる。
もう、心配すらなくなる。
.
.
翔「菜穂、考えろよ」
菜穂「考えたよ」
翔「考えてない」
.
.
でもーーーーーー…。
.
.
.
和也『俺に菜穂を奪う資格なんてない』
.
翔『守りたいものって硝子みたいなんだよ』
.
菜穂『二番目に好きですよ』
.
.
.
でもーーーーーー…。
.
.
ぎゅ、と下唇を噛むと鉄の味。
全員が幸せになれる方法なんて、この世に果たして存在するのだろうか？
.
.
.
「…カズは」
菜穂「…？」
翔「A？」
「…カズは、菜穂さんをちゃんと好きだったと思います……」
.
.
賭けだ。
.
.
「酷い振り方をしても…、カズは菜穂さんのこと。ちゃんと好きだったと思います…………」
.
.
どう転がるかなんて分からない。
天使か悪魔か、私の心が囁く。
どう転がるか分からないから、人生だ。
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3819人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
