92.やさしい棘 ページ13
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和也「………だから。」
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和也「俺に菜穂を奪う資格なんてねえの」
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おかゆは多分、とうのとっくに冷めていた。
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和也「…別に同情して欲しいとかさ、そういうんじゃないんだわ。」
「…」
和也「…櫻井がひでぇ女たらしだったら菜穂と別れさせて、菜穂には新しい恋をして欲しかった」
「…」
和也「でもその相手は俺じゃない」
「……」
和也「あんたが言うように櫻井がそう言うやつだったら菜穂は櫻井といたほうが幸せになれる」
「……」
和也「でも。あんたは櫻井が好きだろーが。だから干渉すんなっつったのに」
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違う。色々間違ってる。
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和也「…(笑)、なんであんたが泣いてんの」
「…ぅっ…、だぁって…」
和也「熱上がるぞ。おかゆは冷めるし。なめてんの？」
「なめて…っない」
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そっか。カズは私がまだ翔ちゃんを好きだって思ってるんだ。
だから関わんな、とか。翔ちゃんに怒ってくれたんだ。
翔ちゃんが好きな私だったら、翔ちゃんの味方なんてしてたら胸が破れてしまうほど苦しいから。
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ーーーー…あぁ、そうか。
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和也「鼻水出てますけど」
「て、ティッシュ」
和也「どこだよ」
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この人の、「やさしさ」は分かりづらい。
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一見、傷つけられてるように見えるのに実はそれは相手を一番に思ってる行動で
菜穂さんの時も、私の時も。
この人は、本当は誰より相手を思える人。
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和也「おかゆあっためてくるわ」
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よいしょ、って立ち上がったカズ。
隣がぽっかり空いて、カズの匂いがふんわりと鼻腔を擽る。
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優しくしないで。そんな柔らかく微笑まないで。
優しい声を出さないで。優しく見つめないで。
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「……」
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私、じゃないとあなたをもっと好きになってしまう。
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苦しい。
怖いほどあなたが好きになってしまう。
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和也「…っしょ、ほら。あったかいうちにさっさと食え」
「…は、はい」
和也「他の奴に言うなよ。さっきの話」
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無理だよ。もう
手遅れ、って気づいた時には手遅れなのね。
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