9本目 (ak side) ページ9
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気づいた時には、体が勝手に動いていた。けど、やっぱりナンパなんかされてたら、助ける他なくて、勝手に彼女なんていう設定まで作ってしまった。
「･･･今日は家まで送ったげるわ」
『ありがとうございます･･･』
二人で帰るなんてしたことがなかった。もちろんAちゃんの家も知らないし、大体次の交差点で別れるからその先も行ったことないし。
『･･･ど、どうして･･･助けてくれたんですか？』
「まぁ、そりゃ･･･知り合いがナンパされてたら」
あと、泣いてたし。なんで泣いてたのかは知らないが、とりあえず泣かされたのかと思って、むっちゃイライラしながら近づいてた。
『先輩、ほんまタラシですよ･･･私が先輩のこと好きなの分かってますよね･･･？』
「･･･でも心配やもん」
この行動がタラシなのは分かってる。普通なら送らんし、まず助けんもん。けど、Aちゃんは大切な子。誰よりも大切な子やから。
「大切やから･･･助けるし、送る･･･それだけじゃあかん？」
『先輩･･･嫌いです』
え？嫌いなん？え、どっち！？
『そんな人タラシ嫌です！･･･私の･･･一番で居って欲しい･･･です』
あぁ、可愛いこと言うやん。そのまま落ちてまいそう。けど、幻滅するのが目に見えてるから。
「･･･ごめん、俺のこと知ったらAちゃん、きっと幻滅するから･･･っ？！」
制服のネクタイを思いっきし引っ張られ、唇に柔らかい感触が伝わる。これは、もしかして･･･キスされとる？待って、あれ俺のファーストキス･･･！！
『先輩が好きなんです！秋定先輩が！羽田先輩でも高木先輩でもない！秋定先輩が好きなんです！･･･私、秋定先輩以外好きやないのに･･･』
「俺が･･･どんな人間か分からんくても？」
『空気が読めなくて、暗くて、人気なくて、友達いないのぐらい知ってますよ！』
グサグサと俺の胸を刺してくる。俺、Aちゃんが思う数倍そんな感じやけど。けど。
「思ってるあと百倍ぐらいカッコよくないし、空気読めないし、暗いけど大丈夫？」
『そんな所を含めて好きなんですけど』
まぁええかな、流されても。今は。
「Aちゃんが別れたなったら、いつでも別れてええからな？」
『今は別れる気なんてないんで』
こんな可愛い彼女が出来ていいはずないねんけど。神様、なんかの手違いちゃいますか？
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作者名：明烏 | 作成日時：2021年6月26日 10時
