mellow

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いつかのジャージのお礼とお詫びを込めてわたしが払おうとしたのに、ジェミンの機嫌直してくれてありがとうと逆にわたしがごちそうされる形になってしまった。お会計に来たら準備をしていたのかちゃちゃっと支払いを済ませ、この後どうする？と微笑んでいるジェノは優しさでできているんだと思う。





「家の近くに新しいお店出来たから行きたいって言ってたところなかった？そこ何時までやってるの？」
『9時までだけど、ここから5駅離れてるしジェノが帰り大変になっちゃう』
「大丈夫だよ、行く？行かない？」
『…行きたい』





ボディショップだからジェノはつまらないだろうけれど、それでもいいって言うんだろうなあ。電車に乗ると他のクラスで仲がいい友達がいて、2人って珍しいねと声を掛けられた。周りから見てもそうなんだ…どう反応しようか迷っていたら、レアだからきっといいことあるよとジェノにしてはセンスのいい返事をしていた。




「この駅で初めて降りた」
『用無いと来ないでしょこんなところ』
「うん。だから今日来れてよかった」




ジェノは人生3回目くらいで、前世は人付き合いのプロだったんだと思う。じゃなきゃサラっと支払いできたりしないし、他人の発言なんて覚えてないしこんなこと言えない。同い年か疑いそうになるくらい落ち着いているし穏やかだ。いや、比べている対象がうるさすぎるだけなのもあるかもしれないけれど、15歳の少年にしては人格が完成されすぎている。



着いたのは20時過ぎで、お店はそこまで広くないから充分時間は足りそうだった。店内にはたくさんの香りが充満しているけれど不快感はない。お客さんも店員さんも女子だけだから、ジェノにとって間違いなく過ごしにくい空間だろう。ぱっと見て気になったのは片っ端から買えばいいや。




「これ見て、もこもこ」




わたしの心配とは裏腹に、本人は≪バブルバスお試しできます≫とカラフルに書かれたPOPの着いた小さなシンクに手を突っ込んで楽しんでいる。それをスタッフが逃すはずなく、彼女さんもどうですか？と営業スマイルを貼り付けて薦めてきた。




『彼女じゃないです』
「え〜〜お似合いなのに〜」



思ったよりも響く作りをしていたようで、彼女じゃないって！とはしゃぐ女の子の姿が見える。この世には男女2人で出掛けていたら付き合ってるとしか思わないやつしかいないのか？わたしの疑問をよそに、ジェノはこれ3種類の色と匂いなんだってと呑気に説明を受けていた。

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