大嫌いなきみへ (ページ8)

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「A起きて〜お仕事遅れるよ〜」

朝は強いしすっと起きれる方だったのにある日テンが起こしてくれるようになってから、テンに任せっぱなしにしてしまっている。昔は私の布団にくるまりっぱなしだったのに、成長したということでいいのだろうか。少し寝癖のついた髪に指を通すと、朝ご飯できたら教えて〜と床に寝そべった。

『ベッド入りなよ』
「ん〜、そうするとテン寝ちゃうもん」
『寝ていいよ』
「ダメ、起きてる」
『？』

なんで意地になっているのか分からないけれど、目をとろとろさせているテンを写真に収めるとフラッシュにびっくりしたのかわあ！と大きな声を出した。

「もう〜目覚めちゃったじゃん」
『起きてるつもりだったんでしょ？』
「Aを見送ったらまた寝ようと思ってたの〜」
『えっ、見送るために起きてくれてるの？』

今寝ようとしないのは私のためだと分かってしまえば愛おしくて仕方ない。テンも自分の発言の意味を理解し恥ずかしくなったのか、私に追求される前に慌ててベランダに出た。嬉しくなって私もベランダに向かい背中に飛びつくと、重いんだけど〜と嫌がりながらも降ろそうとしない。私が構いすぎて死ぬほど嫌そうな顔をされた事があったけれど、本当は嫌じゃなかったのかな。少しだけ上がった口角を見てそう思った。

「あ、テン今日ちょっと用事あるから夕飯いらないよ」
『は〜い』
「帰ってくるから」

テンの用事がなんなのかすごく気になるけれど、きっと私が知っていい話ではないだろう。あの癖が出ているのが何よりの証拠。
結局ベランダでだらだらしていたらいつもより遅い時間に家を出るハメになってしまった。今はすごく暑いけれど、来月はもう9月だしそろそろ涼しくなってくる。テンのために軽い羽織でも買って行こうと電車の中で思い立った。

「A今日はご飯どう？」
『行く、ついでに買い物付き合って』
「珍しいね」
『テンに羽織買ってあげようと思って。そろそろ必要でしょ？』

このあいだ遊んだ時に何でも買ってあげるつもりだったのに、テンはTシャツとデニムを何枚か選ぶと、これだけでいいよと私を止めた。部屋着は嫌がりながらもマークのを使っていて(ごめん)、帰ったら必ず家にいるし必要は無いのかもしれない。それでもこれから一緒に過ごしていくならあっても困らないだろう。マークは私の顔を覗き込むと、あいつはヒモなのか？と真剣に呟くから肩を強めに叩いておいた。