大嫌いなきみへ (ページ22)

今日:14 hit、昨日:25 hit、合計:35,166 hit

・ページ22

時の流れは早いものでとうとう日曜日が来てしまう。いなくなる、とは言わなかったけれど、テンは私が何かを感じ取っているのを感じ取っていたらしく、あれがしたいこれがしたいとたくさん言ってきた。2人でくっついてベッドで寝たし、ちょっと高いお肉を使ってハンバーグを作った。私の髪でアイロンをやってみたいと言われたからやらせてあげたら、一瞬耳を挟まれて、私の目の下に傷を作ったときみたいに1人で慌てて、その日は私の傍から離れなかった。

「秋が来ちゃうね」
『そうだねえ』
「寒くなるね」
『うん』
「……こたつ入りたかったなあ」
『なら冬までいればいいよ………痛い痛い、引っ張らないで』

明日は出ていったら帰ってこない気がするから、たぶん今日は2人で寝る最後の日。いつもは私より先に寝るくせにテンは目をぱっちり開けている。特別話すわけでも、こうだったね、ああだったねって言い合うわけでもなくて、お互いをただただ見つめていた。

「テンのことは覚えていなくていいよ。その代わりまた見つけてほしいな」
『見つけるから覚えてるよ。テンも私以外の人のところ行っちゃ駄目だからね』
「わあ、Aが騒いでたドラマ？で女の人が言ってたね」
『覚えてるの？』
「もちろん。テンのこと膝に乗せて見てきゃーきゃー言ってたじゃん」

まだ寝たくないのに次第に重たくなってくる瞼。どうして寝たいときには寝れなくて、寝たくないときには寝られるのか不思議でしょうがない。テンが歌っている鼻歌は、当時私が気に入って何度も聞いていた音楽で、そういえばこれもテンに聞かせていたなあと思い出した。

「おやすみ、A。また会おうね」

それはちょっと早いんじゃないかな、明日もおはようって言うんだし。そんなことを思いながら私は意識を手放した。