大嫌いなきみへ (ページ18)

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中学が同じだったのは嘘ではない、けれどAを初めて見たのは小学生のころ。バスケのクラブチームの合同練習があり、その帰りに公園で楽しそうに笑っていたAの顔は今でも思い出せる。たぶん、男女の違いとか、好きとか嫌いとかを周りで意識し始める子が増え始める年の頃だった。友達の話を聞いていても僕は全然ピンと来たことがなかったんだけれど、家に帰ってもその子のことが頭から離れなくなって、友達が言っていたことはこういうことか、と初めて理解ができた。

場所と人数の関係で、中学は2つの小学校が合わさる作りになっていたから、もしかしたらあの子もいるかもしれないと胸を弾ませた入学式。探したけれどその子はいなくて落胆したけれど、それからしばらくして、校舎内ですれ違ったことにより真逆の感情に舞い上がった。構造上の問題で、何クラスか一棟隣の建物にあるんだけど、Aはそっちのクラスらしかった。体育や選択が合同授業になるクラスじゃないし、移動教室でもAのクラスの廊下や階は使わない。話し掛けるしかないんだけど、きっかけもないし、ましてやその年齢だからこそ、気軽にそんなことはできなくて。

帰りになら話し掛けられるかもしれない、そう思ってチャンスを伺っていたけれど、中学の目の前にある道をまっすぐ行くのがA、右に行くのが僕。いつも一緒に帰っている友達もいたし、そんなものがやって来ることはなかった。時たまバスケの練習でAが住む地域にある体育館に向かうとき、わざわざあの公園を通ったりしてAがいることを確認できたこともあったけれど、向こうは気付いていなかったし、まず僕のことを知らないだろうし、そんなやつから話し掛けられても気味が悪いだろう、と何度上げかけた手を下ろしたことか。

誰かに嘲笑われているかのような、その時のあの視線がテンから感じたのだ。あの小さな場所にはAしかいなかったはずなのに。あれを感じると居心地の悪さと自分の情けなさが相まって、恥ずかしい気持ちになりながら帰路に着くのが当たり前になっていた。

高校にAはいなくて後悔したけれど、日常を過ごしていればそんなものは薄れていく訳で。大学を卒業し会社に入社して衝撃を受けて、あれだけ躊躇っていたのが嘘のようにAに声をかけていた。

「僕達多分中学同じだったよ」

そういえば見たことある、みたいなテンションで。本当はAとずっと話したかったんだ。