大嫌いなきみへ (ページ16)

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さっきとは打って変わって今度はテンがとてもつまらなそうに私の後を着いてくる。それは逆も然りで、マークは子供みたいに店内を歩き回り、見て！これすごくいいやつだ、と1つギターを手に取った。マークが好むのはアコースティックギターのようで、気になるのがあれば私とテンを呼び、どっちのデザインがいいかとか音はどっちがよく響くかとかたくさんのことを尋ねてくるけれど、ちんぷんかんぷんなため曖昧に返事を繰り返しているだけだ。それでもマークは真剣に私たちの意見を参考にしているから非常に申し訳ない。

「あんた弾けるの？」
「弾けなきゃ見にこないし興味無いだろ」
「じゃあ興味無い絵画展にはどうして来たの？下心？」
「や……やー！何言い出すんだお前は！」
『うるさいよ』

店主のおじさんは穏やかな人らしく騒がしい2人をにこにこ見守ってくれている。他のお客さんがいないからというのもあるだろうけれど、椅子を3つ用意した後、好きなだけゆっくりしていってねとコーヒーとお菓子まで出してくれた。マークはそれに見向きもせず弦を指で弾いて、誰もが知っている洋楽のメロディを奏でていく。あれだけ楯突いていたテンも、椅子に腰をおろし目を瞑りそれに合わせ体を左右に揺らしていた。

「テン別にあいつが悪いやつだって思ってないよ。ただどうしても許せないことがあって、それでイラついてるだけで」
『そうなの？』
「たぶんAは絶対分からないことだよ。僕が欲しかったもの全部持ってたのに何もしようとしないんだもん。これはきっと、僕とウィンウィンしか分からない」
『ウィンウィンは友達？』
「うん、そう。もう会えないけどね」

私の肩に額を押し付けてきたテンの表情は伺えなくて、どういうことか聞きたかったけれど、それについては触れないようにした。会えなくなるというのは想像よりも切なくて寂しくて残酷だ。

「あいつのことは嫌いだけど、あいつが弾くギターは好きだよ」

機嫌がいいのを隠しきれないと悟ったのか、珍しく嫌味1つ言わずマークを褒めた。いや、褒めたうちに入るのか分からないけれど、この前みたいな一方的に威嚇するような態度を取ることはなさそうだ。

「テンもそれ弾きたいから教えて〜」
「じゃあまず爪切れ」
「それはいやだ！」

秋服を1度も袋から出していないのはただ単に気に入らなかったからなのだろうか。ーー難しいことを考えるのはやめて、騒いでいる2人を見つめた。