大嫌いなきみへ (ページ2)

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駅から徒歩15分とまあまあ離れているため家賃の割に部屋は広い。我が物顔でベッドに潜り込んだのは金髪男。ふくらはぎから下が丸見えというなんともへんてこな状況だけれど、私も何も言えなかった。

私の問いかけに答えることはせず、にこにこ笑った彼は、見かけによらずきちんとしているようで、靴を揃えて靴下を脱いでから部屋に入った。まるで私がそうすることを知っていたかのように。昔から私は外に出掛けた服でベッドに上がるのが嫌いで、いつもシャワーを浴びてから横になったり座ったりする。友達にさえ言ったことのないこれを知っているのはーーーもぞもぞ動いた彼は布団から顔を出して、私の様子を伺うとおかしそうに目を細めた。これはテンが私をからかっている時にする表情だった。

「ねえハンバーグは？」
『無理だよ、今日材料ないし…野菜しかない』
「え〜嫌なんだけど」
『昔はすごい食べてたじゃん』
「それはAが食べなって言って僕に無理矢理食べさせてたからでしょ？まあいいや、明日はハンバーグにしてね」
『明日は出掛けないつもりだったんだけど』
「ダメ！明日は絶対ハンバーグ！」

起きた彼が私に覆いかぶさってくる。そうだ、昔も構って欲しいときはよくこうして私の邪魔をしてきた。輝く金色のそれに指を通すとふわふわしている。気持ちが良かったのか嬉しかったのか分からないけれど、首元にすり寄ってきて私の名前を1回呼んだ。

「やっと会えた、いきなりいなくなってごめん。だけどこうして帰ってきたんだから問題ないでしょ？」
『聞きたいことはたくさんあるけど、とりあえずご飯食べよう』
「僕はここでゴロゴロしてるね」

相変わらず気分屋なようで今度は床に横になった。痛くないのか心配になったけど、本人はあまり気にしていないらしく腕を伸ばすと大きな欠伸をした。

「僕が付けた傷の跡、残ってなくてよかった」

私の目尻を親指の腹で撫でて安心したように呟く。数年前まで残っていたそれは、付けた本人がしか知らないはずだ。親とか友達には、ぶつけたときに傷が付いてしまったみたいだと嘘をついていたから。普段は私を好き勝手振り回すくせに、1週間くらい私の言うことをちゃんときいて私にべったりだった。

『本当にテンなんだね』
「そう思いたければ思えばいいよ。ねえ早くご飯」
『あ〜はいはい』

ずっと会いたくてたまらなかったテンが帰ってきた。誰がなんと言おうと、この男は間違いなくテンだ。