大嫌いなきみへ (ページ1)

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ずる賢くてわがままでいたずら好きのとっても可愛いあの子は今でも元気にしているだろうか。会えなくなって10年経つけれど忘れたことはないし今でも時々思い出している。たまに夢に出ては私をからかって気付いたらいなくなるのはあの頃と何ひとつ変わっていない。もしまた会えたら何を伝えようかーーーそんなありえないことを想像しながら、確定のエンターキーを押した。

『できた〜！』
「お疲れ、今日ルーカスたちとご飯行くけど来る？」
『眠いから帰る』

隣のデスクのマークは私より少し先に頼まれていた資料の作成を終えていたらしく、定時ちょうどにすぐ上がれるように荷物をまとめ始めていた。マークと私は同期、でついでに言うと中学時代の同級生らしい。正直私の中でマークの記憶はほぼゼロに等しく、入社したばかりのとき、僕達多分中学同じだったよ、そう言われたけれど、ふーんそっか、で終わった。真面目で素直なマークが嘘を言っていると思えないからアルバムを見返そうとしたけれど、どこにしまったのか見つけられず、結局嘘か本当か分からないままである。

ご飯は行きたいけれど疲れたし眠いし明日は休みだから夜更かしをして好きなことをして過ごしたい。きっと私の考えをマークは分かっているだろう。2年間同じ部署で隣のデスクともなれば自然とそうなる。

『また誘って』
「どうせ来ないでしょ？」
『う〜ん、気分による。じゃあね』

ぎゅうぎゅうの満員電車に揺られること20分。会社の近くだと知り合いに会いそうなのが嫌で、わざと少し離れた場所に部屋を借りた。マンションの傍にはスーパーやコンビニ、薬局があるしほどよい都会で住むにはちょうどいい。角を曲がればすぐに私の部屋……のはずなんだけれど、そこには見覚えのない金髪のお兄さんが座り込んでいた。

「遅いじゃん〜、お腹すいちゃったんだけど！」
『えっ？』
「ハンバーグ食べたい！A好きだったよね？」
『えっ、あの、どちら様ですか……』
「……もしかして忘れたの？あれだけ好き好き言っておいて？」
『待って何の話……？』
「よく僕が無視する〜って泣いてたじゃん！」
『えええ……』
「本当に分からないの？悲しいんですけど〜」

そう言って見上げた彼の目は、鋭くてぱっちりとしていて、まるであの子のようなーーー。

『……テン？』

彼は答えることはなく、早くお家入ろ〜、そう言って私から鍵を奪い取って、鍵穴に差し込んだ。