・・ ページ7
起きたらドヨンは既にいなくなっていた。机の上にはメモ書きスマホが残してある。文章は分からないと言ったからだろうか、昨日私が書いたように、いくつかの単語が並んでいた。うん、理解出来る。もし暇だったり何かあったりしたらこれを使って、ということらしい。ご丁寧にアプリの説明までしてくれてある。とりあえずメッセージアプリの黄色いアイコンをタッチすると設定が済まされており、友達の欄にはドヨンがいた。
《ドヨンありがとう、買ってくれたの？》
《昔僕が使ってたやつ契約し直しただけだから気にしないで》
トークを送ると秒で返ってくる辺り、どの国の若者もスマホ依存症なんだということが伺える。そうだよね、便利だもん仕方ないよね…。
ドヨンは初日以来敬語を使えと言わなくなった。本当は使うべきなのを分かっているけれど、距離を感じそうだから少し寂しいと伝えると、特別だからな、と嫌そうな顔をしていたけれど許してくれた。
《食べたいものあったら食べていいから》
《量減ったりしたらメンバーさん気付くんじゃない？》
《大丈夫、人数多いし誰が食べたかなんて分からない。じゃあ仕事してくる》
《行ってらっしゃい、早く帰ってきてね》
本当は外に出掛けたかったんだけれど、私はどうやら方向音痴らしい。この前1日中歩いた日も、この街をぐるっと1周しただけみたいで、あのコーヒーショップから15分で家についた時は目がこぼれ落ちるかと思うくらいびっくりした。ドヨンからも頼むから1人でどっか行かないでねと念を押されたため、大人しくお留守番をしているのだ。
『フレンチトースト作ろ』
自分のことは思い出せないのに、食べ物や物の使い方は覚えているなんてどういう脳をしているんだろう。生クリームがあったからリッチにそれも添えることにした。思いの外上手くできてテンションが上がったのは一瞬で、口に運ぼうとしたけれど体がそれを受け付けない。そうだ、私今は物を口にしなくても生きていけるんだ、忘れてた。
『ドヨン好きかなあ』
残念に思いつつラップをして部屋に持っていく。ノートを破って、日本でのあだ名である《ドヨチ》と兎の顔を書いて上に乗っけておいた。少しクリームが溶け始めてしまっているけれど、冷蔵庫に入れておく訳にはいかないから仕方ない。無かったものがあるってちょっと、いやかなり気持ち悪いもん。あれ、それって今の私のことだ。ドヨンがいる時はこんな考えしないのに、早く帰ってきて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1062人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「NCT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
am - ウェブからですが…一気読みさせて頂きました…別のお話で主さんに出会って、他の作品も読んでみたいと思い…このお話凄く感動しました大好きです😭今まで見たものの中でいちばん😭これから何度も読み返そうと思います！ (8月13日 15時) (
レス) @page44 id: ac71b3b21f (このIDを非表示/違反報告)
ye8(プロフ) - stellaは何度も読むぐらいすきな作品なので主人公の登場にわきました！これからも応援しております (2022年10月5日 20時) (レス) id: df52ff380a (このIDを非表示/違反報告)
donut(プロフ) - 大好きです。 (2022年10月5日 14時) (レス) id: 26b0a97f67 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ(プロフ) - テンちゃんのことも忘れてるのが切なすぎます(TT)徐々に謎が解き明かされて行くこと、2人の関係性の進展、気になります…！更新、kikiさんのペースで頑張ってください、楽しみにしています！ (2022年9月4日 18時) (レス) @page26 id: 1da797eec3 (このIDを非表示/違反報告)
ありす(プロフ) - 更新嬉しいです(TT)kikiさんの文章大好きです！ (2022年8月27日 15時) (レス) id: e88d06d936 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kiki
| 作成日時：2020年4月4日 17時
