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「Aがいるから」
さっきまで意地を張っていたのが馬鹿みたいだ。好きだとも何とも言われていないのに、嬉しくて目の前の胸に顔を押し付ける。隙間無くす方法知ってるじゃん、と鼻で笑ったドンヒョクさんは、私の首筋に顔を埋めた。
「まだはっきりとは言えないけど、ちゃんと伝えるから、俺の中でちゃんと思い出にできたら、そのとき好きって言う」
『……もう言ってますよ』
「ん〜〜キスしたい?」
『そんなこと言ってな……「俺がしたいんだけど、ダメ?」』
オレンジがネイビーに変わって、今日は大好きなお酒を浴びるほど飲むつもりでいたのにそんなことはどうだっていいや。唇がくっつく直前、ドンヒョクさんが好きだよと言ってきた。信じていいのだろうか、会えない2カ月の間にいったい何があったんだろう。これでもしまたあの人のことをかわいいだとか、私をほっぽって迎えに行ったり頬をくっつけて写真を撮っていたりなんかしたら、そのときは思いっきりビンタを食らわしてやる。
「A」
日が暮れて夜になりかけているのに太陽が眩しい。何度も何度も私の名前を呼ぶドンヒョクさんは、美容師のドンヒョクさんではなくて、ただのドンヒョクさんだった。自分でも何を言っているのかよく分からないけれど、また一緒にいられるならそれでいい。
『ドンヒョクさんって私のこと好きですよね』
「うん、好きだよ」
『…付き合いますか?』
「俺は別れたつもりなかったんだけど」
『んん…』
「言ってないじゃん別れようなんて、ああすればAは俺のこと今以上に考えてくれるかもって思ってたから」
『うわあ』
「俺の作戦は成功?」
成功どころか大成功だ。出会ってから好きになって、あの悩める期間中も今だって、私はドンヒョクさんに転がされている。きっとこれからも永遠にそうなんだろう。私は一生この人には勝てないし、勝つつもりもない、勝てなくたっていい。顔が近付いて来て目を伏せたらドンヒョクさんの左手にあるものが目に入って私はあっと声を上げた。
『お花!』
「俺より花?」
『まあ今は…』
ぶすっとしているドンヒョクさんは、それなら帰ろうと私の手を引いて歩く。不機嫌そうにそれ似合ってる、と誉めてくれたネックレスはクリスマスにくれた、もう1つのプレゼントだった。後で爪も見せて下手くそだって笑ってもらわなきゃ。太陽のはずなんだけれど、新しい髪は、暗闇を優しく照らす月の色をしていた。
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natsu(プロフ) - 初めまして。kikiさんのお話を検索から見つけて、一気に読みました。描写が繊細で読んでいて惹き込まれます、、特にカラフルデイズが大好きです!ドンヒョクさんサイドのお話があるなら読みたいです...!夢を見ていたもとても楽しみに読んでいます〜! (5月27日 10時) (レス) id: 134a97b61f (このIDを非表示/違反報告)
オタク(プロフ) - めちゃめちゃ号泣した (2023年3月21日 23時) (レス) @page45 id: 8419699ac0 (このIDを非表示/違反報告)
Kiki(プロフ) - 藍子さん» ありがとうございます!結構ドンヒョクさんのキャラがアレだったので書きながら不安に思ってましたが、そうおっしゃって頂けて嬉しいです(TT)ありがとうございます(TT) (2021年8月12日 10時) (レス) id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
Meg(プロフ) - Kikiさん» 楽しみにしていますね(^-^) (2021年8月9日 0時) (レス) id: 5ccba9fce9 (このIDを非表示/違反報告)
藍子(プロフ) - mellowに続いて読みました。見事にドンヒョクさんに転がされました(TT)胸がギュッとなるようなせつなさの描写がとても丁寧で心を掴まれたようでした。mellowもそうですがKikiさんの胸が苦しくなるせつない物語がたまらなく好きです。これからも応援しています! (2021年8月8日 15時) (レス) id: 38ce9b1f3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kiki | 作成日時:2021年5月17日 1時