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「明日は5時に迎え来るから寝坊するなよ」
明日ってかもう今日だけど。揚げ足を取るのをぐっと我慢しバンから降りる。マネージャーは2人いるから、1日ずつ交代で仕事が出来ていいよなあ、なんでも出来るなら何をしたいか問われたら、日本の忍漫画に出てくる分身の術を身に付けたいと即答するだろう。この仕事に不満はないけれど、常にこの先どうなるかの不安を抱えながら生きているし、時々自分が誰なのか分からなくなって怖くなることもある。私は昔から役に囚われやすい。よく言えば没入できているということなんだろうけれど、ドラマの撮影が終わって自分が返ってくるまでに時間が掛かってしまうのだ。
バンが小さくなっていくのを確認し、部屋には向かわずに、エントランス内にあるここのマンションの住人しか知らない扉から再び外に向かう。ただの用具入れに見えるそれは、私からしたらここではないどこかに逃げ出せる、魔法の扉。そこから外に出たからと言って異次元に行く訳ではなくていつもと同じ道が広がっているだけなのに、不思議とわくわくするのだ。
裏庭に抜けて、ゴミ捨て場の隣にあるこれまた用具入れのような扉に続く道は、砂利道で足場は悪いけれど、今まで歩いてきたどのレッドカーペットよりも私にとっては眩しいもので。眠れなさそうな日は夜な夜なここから抜け出して、目的のない散歩をするのだ。正面から出なければサセンに見つかったり記者に撮られることもない。誰にも知られることのない旅は、窮屈で退屈な生活を繰り返す私にとっての唯一の楽しみになっていた。
そんなわずか数時間の非日常は、あっという間に目の前にいる人物によって壊された。明後日から撮影が始まるから撮影前の最後の晩餐のつもりで大好きなチョコレート菓子を買いにコンビニに来たら、深くキャップを被った人物が近付いてきて、今日はもう自分のスイッチを切り替えられそうになかったから逃げようとしたら「待って」と、キャップのつばを少しだけ持ち上げた人物は、ついさっきまで小さな四角い箱の中で共演していたイジェノだった。
「女の子がこんな時間に危ないよ」
『最悪』
「俺と会ったこと？」
『仕事以外で関係者に会いたくない』
「その気持ちは分かるかも」
『なら…』
「でも、せっかくだし話そうよ」
『私たち話すことなんてある？』
「ないね」
ないと言ったのにイジェノはレジで肉まんとあんまんを注文して「ちょうど1つずつ余ってたから」と、1つを私に渡してきた。
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Kiki(プロフ) - なつみさん» あんまり女優設定って見ないなと思って書いた作品なので、そう言って頂けて嬉しいです🥺ヒロインちゃんの変化にも注目して頂けたらと思います〜🥺 (3月16日 12時) (
レス) @page26 id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
なつみ(プロフ) - 他では見かけない設定なので、毎回楽しく読んでます！クールなヒロインが…！？って展開になってきてわくわくしてます🥺 (3月14日 12時) (レス) @page23 id: 7227221f75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作成日時：2023年12月7日 18時
