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「わ、目から宝石が落ちてきたみたい」
ゆっくり瞬きをした私にジェノはドラマの台本にありそうなことを言った。誰に聞かれていてもおかしくないこの場所ですべきことではないのだけれど、今を逃したらずっと先になってしまう気がして。
『前も言ったけど、連絡取るの得意じゃないの。表情の見えないやり取りが苦手で。この感じ分かってくれる？』
「…うん」
『でも、ジェノとはもっと言葉を交わしたいし話したい、声も聞きたいし、姿を見たいって思うの』
「…………ほんとに？」
『これから好きになるんじゃなくて、私はもう好きだよ』
今の私は、間違いなくただのAだ。わがままなお嬢様でも、純粋な女子高生でも、優秀な助手でも、天才科学者でもなくて、世界に1人しかいないただのA。目の前で目を見開いているジェノに恋をしている、どこにでもいる大人。涙が一粒落ちるたび、私が纏っていた女優のAという最強の鎧もぽろぽろ剥がれていく音がする。ジェノがいなくなったらそれをまた纏わなければならないんだけれど、この人の前では、何かに刺さったらすぐに割れてしまう風船のようなそんな姿でありたい。
「…………」
『ジェノも早く私のこと好きになって』
「……ばかじゃないの」
そう言ったジェノは私を抱き寄せ「とっくに好きだよ」と耳を甘噛みしてきた。背筋にぞくぞくとした何かが走り、思わずジェノを突っぱねる。『あ、ご、ごめん……』機嫌を悪くしたかもと思って慌てて謝ると、ジェノは怒るどころかずいぶんと嬉しそうだった。
「今日からよろしく、ってことでいい？」
『……うん』
「俺のこと好きなの？」
『す、好き……だよ』
ジェノの目にかかっている前髪をはらうと冷たくて心地のいい視線が私を捉えた。ひんやりしているんだけど、心の中にすっと入ってくるそれは決して不快なものではない。たぶん、私がずっと欲しかったものはこの感じなんだろうなって。ジェノの顔を両手で包むと、引き寄せられるようにキスをした。どんなドラマのワンシーンよりも儚くて、甘い、私たちだけの空間。『……ちょっと、鼻、高すぎて邪魔』「今言うこと？」『今だから言うんだよ』「……大丈夫、そのうち慣れるよ」私を起こした張本人の手でもう1度横にされた私は頭がパンクしそうになりながらも、繰り返されるキスに必死に応えていた。私を見て可愛いと言うジェノは随分余裕そうで、そんな姿にときめきを感じながら、彼の過去の全てに嫉妬した。
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Kiki(プロフ) - なつみさん» あんまり女優設定って見ないなと思って書いた作品なので、そう言って頂けて嬉しいです🥺ヒロインちゃんの変化にも注目して頂けたらと思います〜🥺 (3月16日 12時) (
レス) @page26 id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
なつみ(プロフ) - 他では見かけない設定なので、毎回楽しく読んでます！クールなヒロインが…！？って展開になってきてわくわくしてます🥺 (3月14日 12時) (レス) @page23 id: 7227221f75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作成日時：2023年12月7日 18時
