・ ページ23
ロードバイクをコンビニに置いて手を繋いだまま人目のつかないような路地裏を歩く。ご飯屋さんのごみが捨てられているような汚い細道だったけれど、私たちには都合がよかった。真っ暗ではないけれど相手の表情ははっきりと見えない明るさなのもかえってちょうどいい。風が吹くとジェノから微かに甘い爽やかな香りが流れてくる。さっき抱き締められたときは全然分からなかったのは緊張していたせいなのだろうか。
「カムバするからしばらく会えなくなるけど平気？」
『何その聞き方』
「俺は寂しいけどAは大丈夫？」
『まあ』
「平気なんだ？」
『…まあまあ寂しい』
「なら連絡先交換しよう」
『連絡取るの得意じゃなくて…』
「気が向いたときに送ってくれたらいいよ。会話が続くようなことじゃなくてもいい。ご飯を食べたとかこれから撮影だとか。寝る前にこんなことがあったってそれだけでもいい。たまに声が聞きたくなって電話するかもしれないけれど、そのときは俺がたくさん話すから」
ジェノは今までこうやって女の子に接してきたのだろうか。それはちょっと……正直、かなり嫌だけど、好きな感情が無くとも引っ掛けるくらいのことはしてきただろう。この見た目なのだから、今まで何もなかったなんてことは100%ありえないと分かっているのに、これは嫉妬という物なのだろうか。今もこれからも、私だけがいいなんて思ってしまった。今日はどうやら、自分を上手にコントロールすることができない日みたいだ。
『…ジェノ』
「ん？」
『これからは私だけにして』
お互いなんとなく、薄暗い中で目が合ったと感じたんだと思う。ドラマの台本みたいに数秒見つめ合った後、ジェノは私の輪郭に手を添えた。
「…ねえ」『こういう時は黙ってするんだよ』「うん。でも、それは俺が嫌だから」『……』「キスしてもいい？」『いいよ』
薄い唇は意外と乾燥していて、思っていたよりも温かかった。1回、2回、と軽く重ねられ、もどかしく感じ始めた頃には手は首の後ろに回っていて、少し長めのそれをされる。あ、でもこれ、よく考えたら……
『ドラマ以外でするの初めてかも』
「彼氏は？」
『いたことないよ』
仕事ばかりしてきたんだからそんな暇あるわけなかった。成人するまでずっとお母さんがずっと私のスマホを管理していたのだから、異性と連絡など取れるはずなかった。それを聞いたジェノは「じゃあ俺がAのファーストキスの相手だ」と嬉しそうに笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1112人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Kiki(プロフ) - なつみさん» あんまり女優設定って見ないなと思って書いた作品なので、そう言って頂けて嬉しいです🥺ヒロインちゃんの変化にも注目して頂けたらと思います〜🥺 (3月16日 12時) (
レス) @page26 id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
なつみ(プロフ) - 他では見かけない設定なので、毎回楽しく読んでます！クールなヒロインが…！？って展開になってきてわくわくしてます🥺 (3月14日 12時) (レス) @page23 id: 7227221f75 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kiki
| 作成日時：2023年12月7日 18時
