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「……今日はAの方が先に来てた」
ハンドルがぐるりと湾曲している自転車に乗ってきたジェノはヘルメットを脱ぎそこにかけた。ヘルメットの下にキャップを被っていたようで、そのせいで押し潰されて型崩れをしていたためそれを直していると、ジェノの喉仏が上下する。私は持っていないそれを見て、ああ、ちゃんと男の人なんだって今更すぎることだけれど、そう思い心臓が音を立てた。
「ヘルメットを取って顔がもろ見えたら困るなって思って被ってきたんだけど、おかしかったね」
『ううん、似合ってた』
「本当？Aがそう思ってくれるならいいや」
『…これ一応自転車なんだよね？』
「ロードバイクっていう競技用の……この前共演したとき、ジェミンがこれについて話したら、直接は見たことないって言ってたから乗ってきてみた」
『私そんなこと言ってた？よく聞いてたね。…かっこいいけど、これだと2人乗りできないね』
やらかした、無意識のうちにとんでもないことを言ってしまった。自分の発言にはっとして地面を見つめると、ジェノは私の顔を覗き込んで「次は前のやつ乗ってくるね」と私の頬を指でつついた。
SNSで共演者キラーだとか男たらしだとか体を使って仕事をとってるだとか、私をよく思わない人にアンチされることが多いけれど、真実ではないんだしどうでもいいと思っていた。周りにいるスタッフさんや近しい人や私を応援してくれている人たちは信じていなかったし「また嫉妬で馬鹿言ってるよ」と笑っているからいいかなって。
業界内でもそういうでっちあげの話が出てくることはあるから、同業者の誰かしらの耳には入っていて、鵜呑みにする浅はかな人物もいるんだろうなと気にせずいたんだけど、もしその“誰かしら”がジェノだったら、とそこまで考えたら、今まで味わったことのないやるせなさが沸き上がってきて、どこ行こうか？と話しかけてきたジェノの首に衝動的に腕を回していた。
『私、どうでもいい人にこんなことしないよ』
「……A？」
『何とも思ってない人に何回も会いに来ようなんて思わない』
「…………」
『私も、ジェノのこともっと知りたい』
どうしてスニーカーを履いて来てしまったんだろう。ヒールがないせいで背伸びをしないとジェノとの距離が全く縮まらない。腕の力を強めるとジェノはそれをほどき、腰のあたりに位置をずらす。「俺だってそうだよ」そう言うと私とは比べ物にならないような力で、ジェノは私を包み込んだ。
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Kiki(プロフ) - なつみさん» あんまり女優設定って見ないなと思って書いた作品なので、そう言って頂けて嬉しいです🥺ヒロインちゃんの変化にも注目して頂けたらと思います〜🥺 (3月16日 12時) (
レス) @page26 id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
なつみ(プロフ) - 他では見かけない設定なので、毎回楽しく読んでます！クールなヒロインが…！？って展開になってきてわくわくしてます🥺 (3月14日 12時) (レス) @page23 id: 7227221f75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作成日時：2023年12月7日 18時
