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「暗いからばれないだろうし、誰も芸能人が自転車の2人乗りしてるとは思わないでしょ。どうする？乗る？乗らない？」
ここだけの話、私は自転車に乗れない。ずっと仕事をしてきたから練習する時間がなかったというより、転んで怪我でもしたらどうするのだ、とお母さんに乗ること自体を禁止されていたから。戸惑っている私を見て「Aさんはどうしたいの」とイジェノは私を真っ直ぐ見つめた。
『……怖くて』
「怖い？俺、乗り慣れてるから下手ではないよ」
『そうじゃなくて……』
「もしかして乗れない？」
『……うん』
「あはは、大丈夫だよ。俺に掴まってて」
男の人にしては細いのに筋肉はしっかりあるらしく、ちょっとごめんね、と言ってイジェノは私の手を取った。「支えてるから跨いでみて」私が跨いだのを確認すると、自分が着ていたパーカーを脱いで私に腰に巻くように指示をした。「直接座ると痛いだろうから」と笑うイジェノがそれを知っているのは、自分が誰かの後ろに乗ったことがあるのか、それとも誰かを乗せたことがあってその人が言ってきたのか、どちらかなんだろう。できたら前者のほうがいいなって、目の前にある広い背中を見て思った。
『ジェ……ジェノ』
「！」
『落とさないでね』
「落としたら？」
『死刑』
「罪重すぎない？それは嫌だから、Aは落とされないように頑張ってね」
さらりと呼び捨てをされて、それが耳の奥でずっと響いているように感じ、今まで特に何とも思っていなかった自分の名前が色付いたような気がする。自転車に乗れるから気分が高揚しているだけであって、それ以外の理由は1つもないしあってはならないのに。
「もっと」
『？』
「もっとちゃんと掴まってて」
イジェノは私の腕を自分のお腹に巻き付けるとペダルを深く踏み込んだ。自転車に乗っているから心臓がうるさいのか、ぴったりとくっ付いていることで騒がしいのか。薄いTシャツのせいで浮き出た肩甲骨が目に入り、これ以上私が知らないイジェノだと意識しないように、見ないためにも頬をイジェノの背中に押し付け景色に集中することにした。
「……スピード上げるけど大丈夫？」
『うん。…………楽しいから、平気』
帽子を被っていなかったらもっと綺麗に見えていたんだろうな、と漢江の煌めく水面を見て思う。私の心臓の音が伝わっていませんように、と空に浮かぶ星に祈った。
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Kiki(プロフ) - なつみさん» あんまり女優設定って見ないなと思って書いた作品なので、そう言って頂けて嬉しいです🥺ヒロインちゃんの変化にも注目して頂けたらと思います〜🥺 (3月16日 12時) (
レス) @page26 id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
なつみ(プロフ) - 他では見かけない設定なので、毎回楽しく読んでます！クールなヒロインが…！？って展開になってきてわくわくしてます🥺 (3月14日 12時) (レス) @page23 id: 7227221f75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作成日時：2023年12月7日 18時
