ダイヤモンドに口付け (ページ3)

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「…そう、そんな感じで」

トレーナーの先生が満足げに頷いたのを確認して、俺は疑問に抱いていたあることを口にする。

『ここの部分のセンター俺でいいんですか？』

俺は別にダンスが特別うまいという訳ではないのに、今度あるスペシャルステージのダンスブレイクのセンターを俺が担当するらしい。歌も普通、下手ではないけれど、ヘチャニヒョンみたいな耳に残るような歌声でも、ロンジュニヒョンのように伸びがあって響く声でもない。「Aはそれぞれ割り振って余ったパートしかやらせてもらえない感じ」いつだか、俺のパートが少ないとペンの間で話題になったとき、そんな言葉がまとめ記事に乗っていたけれど、まじでそんな感じ。「Aは本当に顔しか取り柄がないね」アンチが付かないことなんて、この世界で生きている限りは不可能で、いや、これはアンチに入るのか微妙なんだけれど、俺が何よりもいわれて嫌なのがそれだった。

ポジティブにとらえたら「顔は最強にいい」ってことだろうから、喜んでもいいのかもしれないけど。ダンスブレイクのセンターは、俺にはちょっと荷が重い。

「俺は、メンバーの中でAに1番合ってると思う」
『…ロンジュニヒョン』
「キレがあるっていうよりしなやかさと優美さを優先した曲だしAが適任だよ」
『…そうかな』
「おう、自信がないならダンスを魅せるんじゃなくて顔にしか目が行かないようにしたらいい」
『や、それはちょっと…』
「でもそのくらいお前は目を引くってことだから自信持て」
『ヒョーン…』

メンバー曰く、俺に甘い(らしい)ロンジュニヒョンだけれど、誰よりも真面目で誠実だからその言葉に嘘はないと思う。けど、やっぱり、俺じゃない方がと考えてしまうのは仕方ない。どうしてダンスラインじゃないんだ、その声が聞こえてきてしまうような気がして。

「嫌なら他の誰かに頼むか？」
『嫌じゃないけど…むしろちょっと、嬉しいですけど』
「ならやれ。どうしても嫌で、考えただけで吐き気を催すんじゃなければここはお前が担当しろ」

かぶっていたキャップを取ると、ロンジュニヒョンは俺の髪をぐしゃぐしゃにした。「大丈夫、Aならできるよ」こうして笑ってくれたとき、今はないヒョンの八重歯が時々恋しくなる。

『俺、ヒョンの八重歯好きだったんだけどなあ』
「……八重歯って再生できるのかな」
『無理でしょ』

普段の調子に戻った俺を見て、ヒョンは真剣に呟いた。