・ ページ18
『久しぶり、ごめん、おばあちゃんに体調悪くなったから帰るって伝えておいてほしい。駅までちゃんと送ってあげて』
数年振りにする親への電話はただの業務連絡のようなものだったけれど、ほっとしたように元気そうでよかったと伝えてきた。てっきり怒られると思っていたから拍子抜けしてしまい、なんだか呆気なく感じた。それでも長話をする勇気はないから、会話を簡単に終わらせ、部屋を片付け始める。清掃員さんがお仕事でやってくれるのは分かってるけど、置きっぱなしのドライヤーやら飲みかけのティーカップやらをそのままにしておくのは成人女性としてだらしない…気がする。このホテルを利用することは2度とないだろうから、私のことはどう思われてもいい、こんな女にジョンウが会いに行ったと思われたくなかった。
一生懸命ブローしてくれたジョンウには悪いけれど、あの後軽く濡らして自分でやり直した髪に指を通す。途中で引っかかることなくするする進んでいく指を見てむなしい気持ちになった。すぐに出ていくつもりだったこの部屋からなかなか足を踏み出せない理由は1つしかなくて、《本当の最後》になるであろう場所から離れたくないんだ。ここに来てくれたという証明を無かったことにするのが嫌で、片付けも全く進んでいない。
僕を目的にしてよって、それが私を苦しめるということをジョンウはこれっぽっちも気付いていないんだろう。大勢の前で笑っておかしなことをするジョンウなんて私は見たくないよ。応援はしたいけれど、私は2人でくだらないことをして、大人になって、時間に縛られずに好きなときに会えてご飯を食べる、そんな未来が欲しかった。
ドアをノックする音でこぼれ落ちそうになった涙が引っ込んだ。タイミングがいいのか悪いのか判断はしにくいけれど、朝食は部屋に届けに行くって説明されたからそれかもしれない。お腹はすいてるけど食べる気になれない。そもそもこんな時間までいる予定じゃなかったから初めから断っておけばよかった。それでもここでキャンセルはマナーが悪すぎるから、受け取るだけ受け取ろうとわずかに開くと、ドアの隙間に足を挟まれ驚いているうちに、全身が何かに包まれた。
『はっ、や…』
「僕だよ！…ジョンウだよ」
『やめ…ジョンウ？』
「うん、びっくりさせてごめん」
しつこくてごめん、でもなんか、来ないと2度と会えない気がして、その震えた声は私に会うのをやめようと告げたときとそっくりだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1216人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「NCT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Kiki(プロフ) - ジュン三原さん» ありがとうございます！番外編考えてみます〜(^〇^)想像しただけで楽しそうなのでたぶん書きます！！！そのときはぜひお読みいただけたら嬉しいです(>_<) (2022年9月28日 18時) (
レス) id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
Kiki(プロフ) - ありすさん» ありすさ〜ん！いつもありがとうございます(^〇^)推しのンウちゃんですが楽しんでいただけたようでよかったです(;o;)これからもお願いします(>_<) (2022年9月28日 18時) (レス) id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
ジュン三原(プロフ) - Kikiさん、完結おめでとうございます!告白のシーンとかジョンウ言いそう言いそうって思いながら読みました。番外編でメンバーに付き合った報告したお話とか読めたら嬉しいです♡無理にとは言いませんが(汗) (2022年9月27日 18時) (レス) id: e151fe0a99 (このIDを非表示/違反報告)
ありす(プロフ) - Kikiさん完結おめでとうございます〜！！！！今回も素晴らしいお話をありがとうございました！！！！これからも何回も読み返します( ；∀；) (2022年9月27日 12時) (レス) @page44 id: e88d06d936 (このIDを非表示/違反報告)
Kiki(プロフ) - アラムさん» ドンピシャですか！？めげずに完結できてよかったです(;o;)こちらこそお読みいただいてありがとうございました(^〇^) (2022年9月25日 18時) (レス) id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kiki
| 作成日時：2021年8月8日 13時
