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「いくらだった？」
『……』
「払うよ、高かったでしょ？」
『………』
「言ってくれないとナナ困っちゃうな」
不意に出るナナ呼びに、私が弱いことをジェミンくんは既に把握していた。絶対に言うもんかと思っていたのに、それをされたら言わざるを得ない。勝手にしたことなのに、買ってくれてありがとね、とお金を渡してくれたジェミンくんには迷惑をかけっぱなしだ。
「あっ、手洗った？」
『洗ったよ』
「ほんとに？石鹸でちゃんとした？」
『…石鹸ではしてない』
「洗い直してきて」
もしそれが原因で体調崩したら誰がジェムの面倒見るの？と、ごもっともなことを言われ、言われた通り大人しく洗面所でごしごし手を洗う。私が前使っていたものは、薬局に売っているいっちばん安いものだったけれど、石鹸を切らしていることに気付いたジェミンくんが買ってきてくれたものは、押すだけでもこもこの泡が出てくるフローラルの香りのやつ。ジェミンくんにとっての女の子は、きっとこういうものが似合う、ほんわりした子なんだろうな。ぼさぼさの髪だったり眉毛を描いただけで「頑張って化粧しました！」なんて言わないような。
「Aちゃん、ジェムの……えっ、泣いてるの？お仕事で嫌なことあった？」
『…ない』
「うん、そっか、じゃあ聞き方変えるね。Aちゃんにとって何か嫌なことでもあった？」
私にとって嫌だったこと、仕事が進むペースが遅くて先輩に怒られたこと、もう帰るのかと上司に嫌味を言われたこと、本当はもうひとつランクが上のお弁当にするつもりだったのにお金がたりなかったこと、あの子とジェノくんが付き合ったということ。
たくさんあるけれど、そのどれもが違う気がして私は答えられなかった。
洗面所に広がる香りが私を惨めにさせている、そう思った私は蓋を緩めて残りの中身を全て捨てた。今までの人生、失敗をしたくなくて、変な目で見られたくなくて衝動的な行動を避けてきたのに、それを抑えることができなかった。ジェミンくんの前でとんでもないことをしでかしてしまったと我に返る。空になったボトルを手にしたジェミンくんは、何も悪くないのに私に謝ってきた。
「ごめんね、これあんまり好きじゃなかったかな？」
『ちが…ごめ…』
「Aちゃんは何が好きか教えてくれる？」
『…好き？』
「Aちゃんのこともっと知りたいんだ」
腰を屈めて私の涙を拭ってくれたジェミンくんの瞳には、きちんと私が写っていた。
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うー(プロフ) - kikiさん（ ; ; ）ヒロインお疲れさまでした！！！ずっと最高だったんですけど、最後も理想の展開すぎてきゅんきゅんが止まりません（ ; ; ）これから番外編も期待してしまいます…(笑)終わってしまって寂しい感じもしますが、これからも素敵なお話し待ってます！ (2022年12月12日 8時) (
レス) @page44 id: 938e109c39 (このIDを非表示/違反報告)
Kiki(プロフ) - hkrさん» 他の作品も読んでくださりありがとうございます(;_;)ジェミンくんはきっと好きな子に甘いんだろうなって想像で書いてるので最高だなんて嬉しいです(;_;)これからもお願いします〜！ (2022年12月11日 16時) (レス) id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
hkr(プロフ) - kikiさんいつも更新ありがとうございます( T_T)！ 他の作品も大好きなんですけど、今作がもう大大大好きで…♡ ジェミンさん最高すぎます😭 これからも応援してます🤍 (2022年12月10日 1時) (レス) id: fcc5d5eeb6 (このIDを非表示/違反報告)
Kiki(プロフ) - ありすさん» いつもありがとうございます(;_;)自分でもどうなるか分からないのですが楽しんで頂けるように頑張ります！ (2021年8月9日 9時) (レス) id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
Kiki(プロフ) - うーさん» ありがとうございます！今度からはこのお話中心に更新するつもりなので、お時間あるときにお読みください(^^) (2021年8月9日 8時) (レス) id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作成日時：2021年6月14日 21時
