ヒロインになってよ

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もしもちびっこ名探偵がいるのなら今の状況を推理してほしい。学年で…いや、学校で1番と言っても過言ではないくらい人気だった、皆の王子様だったジェミンくんが、その辺のどこにでも転がっている石ころを見て可愛いと思ってたって？話したこともはおろか、挨拶も、目を合わせたことすらないのに。


花瓶の水は変えていたし、裏庭が汚いことが気になって掃除をしたりしていたけれど、それは時間をもて余していて暇だからやっていたことで、見られているとは思ってなかったから、私を見てくれていた人がいたんだってちょっと嬉しかったけれど。



あの告白を聞いてから、首にぶら下がっているカメラでジェムとココちゃんを撮っているジェミンくんの横顔を黙って見ていた。こっちを見たジェミンくんと目が合ったから慌てて反らすというのが何回かあって、その度に「なあに？」と、あの子に話すような優しいトーンで声を掛けてきたから、何でもないと首を振るのに精一杯だった。


ジェミンくんの顔をきちんと見ることができないままだったから「午後はやることがあるから、ここでごめんね」とその場で解散できたことは正直助かった。しっかり顔をあげてジェミンくんに愛想を振り撒いているジェムを羨ましいとも感じて。また水曜日会おうね〜と頭を撫で回されて嬉しいのか、尻尾を振るジェムの気持ちが私に伝染したらしく、水曜日が待ち遠しいと心の片隅でこっそり思った。

ココちゃんは最後まで、おやつを与えようと呼んでも来てくれなかったし懐いてくれなかったなあ、と残念な気持ちを抱えて帰路に着く。通常は帰りのほうが早く感じるはずなのに、1人で話し相手がいないからか、行きの倍時間が掛かっているような気がした。





「ジェムはジェミンくんのこと好き？」




質問の意図が分からなかっのか、言葉自体理解できなかったのか(間違いなく後者だろうけれど)、ジェムは疲れていたらしく、それに反応することなく、ひだまりが作られている場所で丸くなるとすやすや寝息を立て始めた。ジェミンくんは不思議な人だ。色んな人が口を揃えて言っていたその意味を、今ならば理解ができる。



何を考えているのか読み取れないのに、一度彼について考えたら考えるのを辞められない、心のどこかを掴まれて、それがずっとそのままになっていた。



気付いたら支配されてるんだよねえ、苦手だったクラスメイトの言葉に今なら賛同できる。そうなったら手遅れだと諦めたように笑っていたその意味も。

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