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「その……これまだ誰にも話してないんやけど、」
人知れず彼女に想いを馳せている中で言われたその言葉は、自分自身をどん底へ突き落とすような言葉であった。
「私ね、5up所属になった」
「え、」
「さっき、劇場行ってきたん、その用事で。やっと、努力が報われたのかな」
なるほどな、だからそんなに、笑顔なんだ。
その時に俺は、急にAさんの存在が、とてつもなく遠いものに思えてしまった。
劇場メンバー。俺らには届かない境地。
その境地にAさんは、足掻いて足掻き続けて、たった一人で辿り着いていた。
一緒にやってきた仲間が報われるのは嬉しい。
でも行かないでほしかった。
だんだんと俺の思考が矛盾していく。
嬉しいんだか悲しいんだか、今の俺では処理しきれない。
良かったですね、と辛うじて絞り出した言葉を口に出す。
苦しみながらも、もう一度Aさんの方をちらっと見た。
だが、何故か、さっきまで俺に向けられていた彼女の表情は、暗いものに変わっていた。
劇場所属になったことは、嬉しいはずなのに。
ため息をひとつついて、彼女は口を開く。
「でも……認められることと、努力が報われることは一緒じゃないのかもしれへん」
「それは、どういう、」
「スタッフの人たちかな、言うのが聞こえちゃったんよ。なんでAAを劇場所属にしたんだって。ろくに面白くもないのに、どうしてって」
「嬉しかったのに、その言葉だけでね、劇場に所属できたことが、全然、なんでもないような気持ちになってしもた」
すこしだけ残されたコーヒーに、雫がぽた、ぽたと落ちている。
「私はまだ、認められないんやな、全然。こんな半端な立場で、劇場の舞台に立っててええんかなあ、私……」
声を殺して泣く彼女に、彼女の特別な存在であれば何かできただろう。
ただ、その資格は今の俺には無い。
俺は彼女に、何もできない。結局のところ、俺はこのひとの、ただの後輩でしかないのだから。
でも───。
Aさんの悲しんだ表情を見る方が、俺にとっては苦だ。
そう思ったら、自然と手が伸びていた。
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春湊(プロフ) - まぽさん» お久しぶりです！早速読んでくださりありがとうございます🙇♀️🙇♀️ (3月3日 15時) (
レス) id: 1a4158699c (このIDを非表示/違反報告)
まぽ(プロフ) - お久しぶりです。夜分にコメント失礼します。出井さんの新作読めて嬉しいです☺️素敵なお話ありがとうございます！ (3月3日 1時) (レス) @page6 id: 3194fe305d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春湊 | 作成日時：2024年2月9日 0時
