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「んじゃ、そろそろ行くな、俺」
「迷子とかなって、東京の人に迷惑かけんなよ」
「俺もう子供とかやないんだぞ」
こんな会話が簡単にできるのももう無いんだなと思うとやっぱり悲しくなる。
でもこれはさや香で決めたことだから口出しはできないし、ほんとに東京で頑張って欲しいと思う。
テレビで見ない日が無いくらいに売れちゃったら、それはそれで嫉妬ものだけど。
「A!」
新山は私の目をじっと見つめて言う。
「大好きやで!離れても、同期の絆は永遠やからな!」
彼はあの時と変わらない笑顔でそう言って、じゃあな、と残して歩いて行った。
「……だいすき、だよ」
届かない背中に向かってそう呟く。
「だいすきなんだよ……ほんとうに、だいすきなの……ごめんね、新山、ごめんなさい……」
あぁ、駄目だ、私。
溢れる涙が止まらない。
生憎あいつはああいう言葉をするっと言えてしまう男だ。その優しさが私を苦しめていた。
彼の前では言えない愛の言葉は、こうやって去った彼の後ろではたやすく言えてしまうのだ。それが彼に届くはずがないと知っていたから。
せめて、来世では。
来世では君の1ページになれますように。
暗闇の中で佇む街灯だけが、いらないはずの脇役の私を照らしていた。
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久々の更新です
また失恋させてしまいました
エイプリルフールっていうのもあるので「嘘」をひとつのコンセプトにしたりしなかったりしています
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春湊(プロフ) - まぽさん» お久しぶりです!早速読んでくださりありがとうございます🙇♀️🙇♀️ (3月3日 15時) (レス) id: 1a4158699c (このIDを非表示/違反報告)
まぽ(プロフ) - お久しぶりです。夜分にコメント失礼します。出井さんの新作読めて嬉しいです☺️素敵なお話ありがとうございます! (3月3日 1時) (レス) @page6 id: 3194fe305d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春湊 | 作成日時:2024年2月9日 0時