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行き場をなくした恋心 ページ17

大阪34期.

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「なに、見送りに来てくれたん」
「……そやけど、何か?」

そう言って私は彼から目を逸らした。


彼の同期の中では、私が一番仲が良いと思っている。ずっと二組で切磋琢磨しあってきたこの数年間。同じライブに出たりツーマンをしたり同じ大会に出ることができたりなんかして、充分肩を並べる存在にはなっていたと思う。

だから、そんな大切な仲間であるからこそ、彼にしっかりと想いを伝えることが出来なかったんだと思う。

本当に、気づいたら、だったから、いつから新山のことが好きだったのかは記憶に無いけれど、好きだと自覚してしまった時「これは間違った感情だ」と思ったことだけははっきり覚えている。

ほんとうに、大切な仲間だった。失いたくない仲間だった。だからこそ、そこに恋愛という私情を持ち込みたくなかった。恋愛感情を持ち込んでしまったら、きっとこの関係は崩れてしまったろうから。

そんなことを思い恋心を拗らせていたら、新山にはいつの間にか"一生"ができていたみたいだった。この人しかおらんねん、ほんまに一生大切にしていきたい人なんやって、それはテレビでもライブでも、オフで飲みに行った時にも聞いた。耳が痛いほど聞いた話だ。

新山が結婚するとなって結婚式に呼ばれた時も、私は笑っておめでとうと言葉だけを添えた。ブーケトスの時、綺麗な花束が私の手にぽすっと収まった時私はどう思えばいいか分からなかった。

「Aやん!お前もはよ幸せになってな、大切な同期やから!」

いつも舞台に立つ時とは一風変わった白いスーツ姿で、満開の笑顔を咲かせながら言う新山に、あたりまえだろ、と下手くそな作り笑いで返事したっけ。

彼から言われた、大切な同期、という言葉を頭の中で何度も反芻した。

そう、私はただの同期。それ以下でも以上でも無い。

新山にとっての私は大切な同期だったが、私にとっての新山はそうではない。大切な同期の範疇を超えた、重くて醜い感情を抱えてしまっていた。


晴れ渡る空の下、鐘の音が鳴り響くなかで、私の涙は彼の笑顔に掻き消されていた。

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春湊(プロフ) - まぽさん» お久しぶりです!早速読んでくださりありがとうございます🙇‍♀️🙇‍♀️ (3月3日 15時) (レス) id: 1a4158699c (このIDを非表示/違反報告)
まぽ(プロフ) - お久しぶりです。夜分にコメント失礼します。出井さんの新作読めて嬉しいです☺️素敵なお話ありがとうございます! (3月3日 1時) (レス) @page6 id: 3194fe305d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:春湊 | 作成日時:2024年2月9日 0時

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