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「中野君が去ってから、頭の中で思い出してたの、ここで君と過ごしてきた日々のこと。私、馬鹿だよね、もっと視野を広くすれば良かった。早いうちに君のことを好きになれていたら、もっと苦にならなかったと思うし」

A先輩のゆっくりとした声のペースと反比例するようにどんどんと速さを増す僕の胸の音。
彼女の方を向くと、ばちっと目が合った。今の僕はきっと、この人以外には見せられないような顔をしているんだろう。

目を伏せて、再びA先輩は口を開く。

「そこでふと思ったのね。私は中野君のことが、もしかしたらかなり前から、好きだったのかもしれないなって」

先輩が一歩前に出て窓の外を見る。

「泣くほど古賀のことが好きだったのは事実だけど、私はあの時の君の言葉と、君と過ごした日々に、心ごと救われて、そのまま奪われてしまったんだ」

その瞬間に、A先輩が僕の方を向いた。光に照らされていて分かりにくいが、微笑みを向けながら、少しだけ涙を貯めているように見えた。

「もしあの言葉が時効で無ければ、私は君の彼女になりたいと思うの。私はこの場所を離れてしまうけど、それでも良いなら」

視界がどんどんと滲んでいく。僕は好きな人を目の前にして、どんな酷い顔をしているのだろう。
絶対に叶わないと思っていた恋。その恋は、彼女がここにいれる最後の日にようやく叶ってくれた。
あの時はやってしまったなと思ったけど、あの言葉たちが先輩の支えになったのなら、それはそれでいいのかもしれないな、という考えに収束した。

「……中野君、泣きすぎだよ」
「すみません、でも、嬉しくて」
「……待たせて、ごめんね。こんな最終日ギリギリまで」
「貴方が僕のことを好きなら、もうそれで僕は十分です」

そっか、と先輩は呟いて笑う。

今までは直視することが出来なかったこの笑顔は、こんなに可愛いものだったのかと今ようやく気づいた。

「……卒業しても、また会いに来るからね」
「はい、僕も、会いに行きます」


「じゃあ、中野君、一年間ありがとう。お仕事お疲れ様でした。そして、またこれから、よろしくね」

先輩の胸元に咲く花は、身体が重なったタイミングで落ちてしまって、陽の光にあかるく照らされていた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

卒業された皆様、この度はおめでとうございます

皆様の益々のご健闘をお祈り致します

ティールグリーンの泪→←____



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春湊(プロフ) - まぽさん» お久しぶりです!早速読んでくださりありがとうございます🙇‍♀️🙇‍♀️ (3月3日 15時) (レス) id: 1a4158699c (このIDを非表示/違反報告)
まぽ(プロフ) - お久しぶりです。夜分にコメント失礼します。出井さんの新作読めて嬉しいです☺️素敵なお話ありがとうございます! (3月3日 1時) (レス) @page6 id: 3194fe305d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:春湊 | 作成日時:2024年2月9日 0時

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