倍返しだっ！ ページ34
左半身はヒリヒリと熱を帯びていくくせに、右足首はじくじくと脈打つような痛みで腹が立つ。
なんだよ、ダブルでお得ってか。やかましいわ。
ケッ、と唾を吐きかけたい気持ちを抑え、ずりずりと這うようにしてリレーのコート内から出る。
白色の体操服は汚れ、黒髪の毛先は石灰によって白く染まる。
せっかく綺麗な髪で手入れしてきたのに、おじゃんじゃないか。全く。
「み、水鏡さん、大丈夫…！？」
「おん、大丈夫大丈夫。ありがとね」
おずおずと話しかけてきた、名前も知らないクラスメイト。
悪い噂しかない私に話しかけるのは怖かったのだろう。それでも心配してくれたのだろう。その気持ちはとっても嬉しいものである。
一度仰向けになり、上半身を上げる。
見えなかった左足は、皮膚が擦りきれ、血が所々に滲んでいる。
しかしまぁ、血すら映える白い肌なこったぁね。まず私はちゃんと人間だったのか。ちゃんと生きてるんだ。
そう思いながら、じっと左足を眺める。
「っと、そうじゃない…」
今はそんなことを確認している場合じゃなかった。右足首だよ、問題は。
ちらり、と薄目で見ると右足首は真っ赤に腫れ上がり、軽く触れるだけで、激痛、とまではいかないがかなり強めの痛みが周囲に響く。
正直、見た目がやばいのは左足だが、実際に痛いのは右足首なのだよ。
「水鏡さぁん、大丈夫〜？」
「……うん、大丈夫〜！」
眉を下げながら、一見不安そうに歩み寄ってくる女に、へらへとした調子で返す。
思っていた反応と違ったのか、少し顔をひきつらせながら。
「ごめんね、あそこで抜いたの申し訳無くて…」
「いいよ、大丈夫！…でもさぁ、なんで横になんて転んだんだろうね、私。やらかしたなぁ」
大きめの声で、顎に手を当て首を捻る。
やられたらやりかえす、倍返しだ、ってどこかの半沢さんが言ってた。
「っ…！！」
あることに気づいた女は、言葉を失くす。
「えっ、横？前じゃなくて？…確かに、横だったような…」
「でもさぁ、こんなすかすかなところで横に倒れるもんなの？最初の人はともかくさ。…もしかして、」
「たしかに、追い越すにしても妙に近かったような…」
ひそひそ、ひそひそ。
彼女を取り囲むのは、白い目。
私を見るのは、同情の目。
目を大きく見開き、下手くそな笑顔で言い訳をするが、誰も聞きやしない。
ひとつの疑いは、やがて確信へ。
このことは、すぐに学年、学校内へ出回るだろう。
足りない頭でどうするか考えなよ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 564人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
お空の蒼い月(プロフ) - おしずさん» コメントありがとうございます！無我夢中になるほど読んでいただけたのですか！？冥利に尽きます…！ありがとうございます！！ (2020年11月4日 17時) (
レス) id: 94a6e4722e (このIDを非表示/違反報告)
おしず(プロフ) - 気になって読み始めたら、無我夢中で読んでました……控えめに言って天才です好き……。すごく面白くて読む度ワクワクしております！夢主ちゃんの顔面偏差値がわかるところも好きです…イージーモードかよ…。本当に好きです！応援しております！お体に気をつけて！ (2020年11月4日 10時) (レス) id: f2c187ecfd (このIDを非表示/違反報告)
お空の蒼い月(プロフ) - 暇人な名無しさん» コメントありがとうございます！ふふふ、emさんの絡みはこれから掘り下げていきます…！嫌っている理由もそのうち明らかにしていきます。お楽しみにです！ (2020年11月1日 13時) (レス) id: 94a6e4722e (このIDを非表示/違反報告)
暇人な名無し(プロフ) - えっ唐突に嫌ってる！？低姿勢な所が嫌なんかな...？ (2020年11月1日 13時) (レス) id: d7b6c8461a (このIDを非表示/違反報告)
お空の蒼い月(プロフ) - 寒凪レモンさん» ご指摘ありがとうございます。そうなんですか！？自分が調べたところだと別物なのかなと思っておりました…正直言葉選びは語感で決めていましたので、深くは考えてなかったです。ありがとうございます。 (2020年10月26日 22時) (レス) id: 94a6e4722e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お空の蒼い月 | 作成日時：2020年7月28日 23時
