【ｄ！】薬売り兼魔法使いです！【軍パロ】 (ページ24)

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ジャンキーて単語聞かないよね？え、死語？ページ24

男が一人、路地裏からフラフラと出てきた。日の当たる場所に出てきた男の頬は見苦しいほどこけており、首にはかきむしったような跡、両腕にはおびただしい数の注射痕、黄ばんだぼろぼろの服、おぼつかない足元。どれをとっても異常だ。今、彼の眼には私を、私だけを映しているのだろう。逃がさないという強い意志がこちらにも伝わる。

こちらが一歩後ずさりすればあちらは一歩前進する。ならば周りに助けをと思いあたりを見渡すが偶然か必然か、誰もいない。

何歩か下がるとカツンと背中の薬箱が壁に当たる音がする。しまった、もう下がれない。

あいてはフラフラしているから左右のどちらか脇をすり抜ければ逃げられるかもしれない。しかし彼の気迫に押され、身体が震えうまく動かせない。
魔法を使うにしても本は宿に置いてきてしまってない。本がない状態で魔法を試したことがない。できても、この状況を打破できる魔法を思いつくことができない。ないないづくめだ。

私はその場にへたり込んでしまった。どうしよう、大声でも出せば誰かが駆け付けて助かるかもしれない。けど、硬直した身体では大きな声を出すことができなかった。

男はもう目の前まで迫っている。今から自分は何をされるのだろう。薬箱を差し出しば逃げられるかもしれない。しかし、私に命の次に大切な薬箱だ。こんなジャンキーに渡すことはあってはならない。

「お前、何しとんねん。」

横から声がした。声が聞こえた方向に視線を向けると男が二人立っていた。金髪の男とヘルメットを被った男、この二人はもしかして救世主？

「その子嫌がっとるやろ？離れんかい。」
「薬、薬、薬が欲しいだけなんだあ！なぜ邪魔をするぅ！お前らがいるから手に入らないのかあ？なら、こ、こ、殺してやるう！」

目の前の異様な男は拳を握り、不自然に頭を揺らしながら金髪の男に振りかぶる。金髪の男は難なく片手で受け止め、反対の手で殴りつけた。殴られた男は大きな音を立て倒れピクリとも動かなくなった。死んでないよね？

「薬売っとるんか？」
「え、あ、はい。」

私は激しく首を縦に振った後、己の間違いに気づいた。首を横に振り否定する。

「健全な！薬のみ！扱っています！危ない薬は売ってません！本当ですよ！」
「じゃああの男はなんやねん。」
「さあ？」

私は首を捻り両手を上げる。本当に心当たりがない。