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「違う。……ベクが、」
スプーンを置いたAの目が俺に向く。
「うん、俺が何？ 」
優しく、優しく。
多分さっきも言いかけてたやつだから。
「ベクが……っ、ベ、ク、」
「うん、」
Aの目に涙が溜まる。
「ベクが……お金、っ、くれない、からっ、」
「え……あ、そうだよな、うん。そっか」
ベクが居ないからご飯食べれない。とか期待してしまった俺。
だけど、Aの主張は正しかった。
俺ありきの生活で韓国にやって来て、貯金も仕事も無いA。
俺が金を渡さなきゃ、こうなるのは当たり前。
ギョンスにわざわざ言わなくても分かると思ってたけど。
これは、あいつから貰って無いって事だよな。
すぐ部屋に戻って、財布の中身を調べる。
いつも渡してた金の3分の1くらいしか入ってないけど、無いよりはマシだろ。
「これ、使って」
リビングに戻って、オムライスの横に置くと
それを見たAの目から涙が溢れた。
「ベクの馬鹿っ！ なんで分かんないのっ？ ……お金が欲しいわけじゃないのにっ！ 」
怒って投げ付けられたスプーンが虚しい音を立てて床に転がる。
「じゃあ、どうしろって言うんだよ」
「馬鹿に教えるわけないでしょ！ 馬鹿！ もうわたし帰る！ 」
「え、うわっ！ 」
スプーンを拾う為に、しゃがんでいた俺を思いっきり押してバタバタ走り去ってしまった。
なんだよあいつ、
言いたい事があるなら、ハッキリ言えばいいのに。
キッチンから新しいスプーンを取って来て、
さっきまでAが座っていた場所に座る。
半分残ったオムライス。
食べたかったAのご飯。
なのに、1番大事なものが無い。
「しょっぺーよ……」
どうやったら断ち切れるんだろ。
1番早いのは、新しい彼女を作る事だって知ってても
面倒だなって思ってしまう。
それに別の女に夢中になる自分が想像つかない。
…………あ、れ、
そういえば、金、どこいった？
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作者名：もにか
| 作成日時：2017年1月14日 1時
